全員ユニークスキル持ちのチートパーティ
ユニークスキル持ちのみで構成された3人組パーティ、見えない冠はCランクまで史上最速でランクアップした、ということでギルドに入ると視線を感じるようになった。
視線は、嫌いだ。
心臓の裏を悪い汗が伝う。脳の膿が破裂する。
レパスを飲もうとUIマジックのウィンドウからアイテムボックスを開こうとすると、ロゼが腕を掴んで、詠唱をした。
「レチゾラム」
レパスを飲んだ後のような、脳が平熱に戻る感覚。
「精神の治癒魔法にも依存性はあるんですけれど……処方量は減らされてるでしょう。薬をすぐ飲もうとする手の癖から治していきましょう」
「ありがとう。精神治癒魔法なんて本当に習得してる人始めて見たよ」
「わたし、ヒーラーとしては天才なので。脳死から3分以内なら後遺症無しで蘇生出来ます」
ざわめく。
「うっそだろ……?Aランクの治癒専門職でも難しい神業だろ」
「あいつ、『ブルー・クイーン』のロゼだ。冒険者を辞めたって聞いたぜ?」
前と後ろ両方をパロっているせいで元ネタが分かりにくい二つ名だな。
「あの吸血鬼、化け物じみた怪力だったぜ。前にあのパーティと商人の護衛したんだけどよ。瓦礫で塞がれた山道を自分にバフかけて一蹴りしたら爆音がして木っ端微塵よ」
「なんでそんな天才美少女にあんな死んだ目の男が挟まれてるんだよ。アレは大成出来ない奴の目だぜ。まずガッツがなきゃ駄目だ」
「あいつもすげえぞ。クルージベアに囲まれたんだけどよ。もう死ぬ!と思ったら次の瞬間には丁寧に部位ごとに解体された新鮮な熊肉に変わってやがった。『分前は5対5でいいですか?』なんてあの死んだ目で言われてこっちは気が滅入っちまった」
「あの死んだ目がいいのよ。顔もカワイイし。女はね。ああいう男の子に『このコには私がいないと』って思わせられたらもう惚れるしかないの」
好き勝手言うにもほどがあるだろ……。
「どっか遠い所に遠征したいです。切実に」
僕は担当の受付、リリカさんに次のクエストを頼む。
「それなら、発現されたばかりの迷宮の探索依頼が隣国から来ていますよ。既に複数のパーティで15階層まで探索はされていますが、まだ底にはつかないそうです。最低でもCランクなので受注可能です。推奨はBランクですが、3人とも実力としては既にAランク平均レベルなので大丈夫でしょう」
冒険者の間では「Eの壁」「Cの壁」「Sの壁」と呼ばれるランクの上昇でぶち当たるランクの壁がある。
「E」は地道なクエストしか受注できないことからなかなかFから脱却出来ないこと。
「C」はDで一生を終える冒険者も多いことから、Cの壁を超えたパーティは新しい有力者候補とされる。僕らはそれを史上最短で成したので死ぬほど酒の話の肴にされている。
「Sの壁」を超えられる奴は歴史に名を刻む英雄だ。現在Sランクと認定されているパーティは全部シオンなら暗記している程度しかいない。
「ダンジョン!神話!太古の文明!遺物!神話!伝説!冒険!冒険!」
「アリス、トーン落として。これ以上注目されたらぶっ倒れて死んじゃうよ」
「受注しますか?」
「ロゼは?」
「問題ありません。むしろ私のスキルは迷宮でこそ真価を発揮できるので」
「確かに……探索ではぶっ壊れなスキルだね」
「シオン!私のスキルも凄いよ!なんでもぶっ壊せるよ!」
「アリスのスキルはぶっ壊しスキルだね」
「やったー!」
「受注します」
「了解しました。詳細はメールを確認してください」
「ありがとうございます。じゃあ行こうか」
「うん!」
「うん」
「「ダンジョンの冒険へ!」「静かな隣国へ」」
気まぐれ更新でごめんなさい