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血の色の月と見えない冠

完全把握パーフェクト・ビジョン

それが彼女のユニークスキルらしかった。

半径5キロ以内の全ての物及び「全ての物の全て」を見ることが出来る

範囲内ならば、透視はもちろん、物ならば構造やその成分まで。人間、獣、虫、魔物といった生物なら、内面の感情や思考、例えば悪意や嘘などといった心の中まで「見える」のだそうだ。

索敵が出来る、ただの千里眼なんていうレアスキルとはわけが違う。

索敵は言うに及ばず、トラップや奇襲を避けることが出来るだけでなく、感情を見て「戦わなくてもいい」という選択肢すら手にすることが出来る圧倒的なスキルだった。


「ぐぐ、ぐぐぐ、ロゼさんちょっとこっち」

「は〜い?なんでしょう」


二人は僕から遠ざかり、コソコソ話をし始めた。


軽い発作が来て、レパスをかじる。

近くの椅子に座って頭を抱え、脳内の暴走をチューニングして待っていると、収まってぼうっとし始めたあたりで二人が帰ってきた。


「ねえねえ、シオン」

「何?」

「私達のパーティの名前なんだっけ?」

「血の色の月」

「そう!それって夜に生きる吸血鬼である私達二人の名前じゃない」

「そうだね」

「だから、『血の色の月』は私達二人のパーティってことで、新しく3人でパーティを組むってのはどうかな?」

「別にそれでいいよ。名前はなんにする?」

「シオンさんが決めてください」

「僕が?うーん。三人ともユニークスキル持ちだから……いや、それだとユニークスキル持ちしか入れなくなる。この数日で二人ユニークスキルに出会うって雷に5回打たれるくらいの確率なのに」

「いいね!ユニークスキル持ちしか入れないってのはいいね!シオン!」

「駄目だよ。うーん。みんな、英雄になりたい?」

「なりたい!」

「私も、本当は寝物語の英雄譚に憧れて冒険者になりました。その日の分け前やクエストの後の売春宿の話しかしない冒険者を見て幻滅しましたが」

「だからね、だから……」 


貴族の証の銀の冠、王族の証の金の冠を思い出す。英雄譚のヒーロー達は冠なんか無くたってすっごくて、かっこよくて、偉くて。


「見えない冠ってどうかな」

「見えない冠、見えない冠……」

アリスが口の中で言葉を転がす。

「いいんじゃない?冠が無くても誰よりも偉大ってことでしょ?」

「そう、そんな感じ」

「シオンさん、ネーミングセンスありますね」

「じゃあ、見えない冠で。英雄になりたいな」


ポロッと、口から出た。

そんな願い、僕は知らなかった。

願うことすら赦されなかったから。

そんな願い、自覚したら辛くなるだけだったから。

僕は、神話になりたい。

そんな大それた、望むことすら許されないと思っていたことを口から溢すことが出来るのは、隣で笑ってくれるこの吸血鬼の女の子のおかげで。


「ギルドに、申請しようか。僕等は見えない冠だ」


立ち上がる。僕等で見えない冠を探しに行こう。


「血の色の月の傘下のパーティとしてね!」

「え?そうなの」

「そこだけは譲らせられませんでした」

「三人中二人が血の色の月なのに?」

「シオーン、細かいことは言いっこなしよ?」


これはギルドの受付での手続きの話


「えーと、血の色の月のメンバー二人がもう一人メンバーを加えて、見えない冠というパーティを作ると」

「はい」

「見えない冠は、血の色の月の傘下なんですよね?ほぼメンバー一緒なのに」

「はい」

「………なんで?」

「わかりません」



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