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初級クエストを教育虐待で無双します

冒険者登録は15分もかからなかった。


「凄いっていうか、早すぎない……?契約書とか読んだ?」

「冒険者登録は法学で福利厚生から契約内容の安全保障、義務と権利全部暗記してたから」

「法学やってたんだ」

「法学っていうか全部やってたよ」

「学校どこ?」

「エアリオ学園」

「は?!超実力主義の最難関エリート養成校じゃんかよ!!」

「博士号を1年で取らされたよ……専攻は魔術論だけど、論文は伝説学寄り。第一安寧期の英雄の神話と歴史学的事実を現代魔術論で検証した」

「伝説学は私も好き!ホメロスでしょ、ラグナロクでしょ、メシアの教えでしょ、ギルガメッシュの詩でしょ、深淵教でしょ」

「神話寄りだね」

「だって、こんな世界にもまだキラメキが残ってるのって、神話のおかげなんだもん」

「大冒険はずっと先だよ。まずはこのクエストこなさなきゃ」

「それなんだけど……薬草採取、ホーンラビットの討伐、チカの実の採取なんて、1日じゃ終わらなくない?」

「終わらなくない。ロガ峡谷方面に行くよー」

「えっ?だってあそこはマナスライムの群生地だけど、今は季節的に何もないよ?」

「だからだよ」


不思議そうな顔なアリスを峡谷に連れて行った先は、マナスライムが大量発生する夏先に使われる……使われていたであろう冒険者のキャンプ地の跡だった。


「なにこれ……なんでこんなに薬草が生えてるの?」

「薬草は強い植物だから。本来ここにキャンプ地を立てるのは夏先だから、木陰を選ぶでしょ?日光があまり差さなくて、冒険者達が踏み固めた地面に生えられる草は限られてる。競争相手がいないから薬草の群生地になる。ギルドの情報に書かれてる群生地は取り尽くされてて効率悪い。全部採っちゃおう」

「なんでそんなの知ってるの?」

「生物で教えられたから」



「……なんか、余裕でノルマこなしちゃったね」

「残ったのはギルドで換金してもらえばいいよ」

「でも、まだチカの実とホーンラビットが残ってる……本当に終わるの?」

「チカの実は集めたよ」

「え?」

「さっきお花摘みに行ったとき、ホーンラビットの貯食が木の洞にあったから全部失敬してきた。結構貯食行動の後があったからホーンラビットもすぐ見つかると思う。ていうか大量に足跡あったし」

「貯食行動?」

「ホーンラビットが獰猛なのは臆病だからで、チカの実みたいなマナと栄養素豊富な木の実が大好きなんだよ。肉も食うけど。貯食行動っていうのは一部の魔物がする食べ物を見つけて木の洞や地面の下に貯蓄する行動のこと」

「だからチカの実と──」 

「ホーンラビットの討伐を同時に引き受けた。今は冬前だから、あいつら木の実を取りに走り回ってるぞ」

「なんでそんなこと知ってるの?」

「魔物学で習った」

「…………私も勉強ちゃんとした方がよかったかなぁ」



ホーンラビットを規定数討伐して、丁度昼飯時だった。「ログ」さえ送信すれば討伐依頼の証明になるので、僕等は狩った──僕が狩ったホーンラビットを捌いて食べることにした。

アリスが狩った、いや、オーバーキルしたホーンラビットは跡形も残らないか骨まで黒焦げだったからだ。


「魔物捌くの早くな〜い?!」

「長期休暇はほとんど魔物の群生地に一人で放り込まれてサバイバル訓練させられてたから」

「んーなんかさー」


串に肉を刺して焼いている僕をアリスは後ろから片手に掴んで膝に無理やり頭を押し付けた。


「ありすしゃん?」

「おつかれ」

「ぱーてぃだりょ?」

「そうじゃなくて」


そう言って僕の頭を撫でた。まただ。

全身が溶けていくような、あの感じ。


「おつかれ。

今まで、本当に頑張ってきたんだね。私にうんちく喋ってるとき、全然楽しそうじゃなかった。勉強が好きなわけじゃないんでしょ?人と競うのも好きなタイプじゃないでしょ?でも、いっぱい頑張ってきたんだね。

シオン、おつかれ」


心の扉の、開けたく無い場所の鍵が緩む。

アリスには、開けてもいいんじゃないかと緩んでしまう。

そこを傷つけられたら、もう本当に死ぬしかないっていう、そんな心の部分を。

開けたくないから、僕は起き上がる。


過剰魔法(オーバーマジック)、身体強化とかバフに使えばいいんじゃない?付与術は別に他者へのサポートだけじゃなくて、自分にもかけられるよ。効率悪いだけで。でも過剰魔法(オーバーマジック)で『身体強化』や『再生上昇』や『防御上昇』や『速度上昇』を重ねがけすればS級冒険者のタンクやアタッカーと同じくらい──いや、それを凌ぐ最強の前衛になれると思ったんだけど」

「お、女の子の膝枕と甘やかしの後に今までの悩みを一撃で吹っ飛ばすアドバイス!

これで骨抜きにならないなんてシオンは男の子としてどうなのさ!」

「アリス、焼けたよ」

「わーい!」


気骨ならもうとっくに全部骨抜きにされたよ。

他人に期待するなんて、見てもらえ続けるなんて、見捨てられないなんて、褒め続けてくれるなんて、叱り続けてもらえるなんて、そんな期待、最後は傷つくだけだって、骨身に染みて分かってるから。


ギルドは余った薬草を半分金ではなく、ランクのポイントに変換すれば、Eランクに昇格出来ると言った。

アリスは当然の様に昇格を選んだ。

お嬢様は目の前の金より栄誉を欲しがる夢見がちな戦乙女なのだった。


と、言うわけで僕等は3週間かかるとされるEランク昇格を1日で制覇した。

少しは冒険者らしい仕事が出来るランクだ。

アリスが楽しんでくれるといいんだけど。


アリスが楽しんでくれさえすればいいそれでいいそれでいいそれでいい明日になればアリスと会える眠らなくても夜は明ける明日になる会えるアリスと会える。


深夜、僕はベッドで頭を掻きむしりながら呻いていた。






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