少年から少女へ ちっぽけな誓いから
知られた。知られた。知られた。
耳が熱くなる。
僕が憂鬱病だって知られた。
こんなに綺麗な女の子に
こんなに強い女の子に
頑張った、凄いって言ってくれたのに僕が怠け者だってバレた。
「そっかー心の病気なら休まなきゃねー」
アリスは外せない予定で遊べなくなったみたいな、そんな軽い口調で言った。
「い、いや、僕はパーティ組んでもいいよ。こんなの全然だし。本当に」
「いやいや、しっかり休みなって」
「やろうよ、冒険者」
「だって——」
「大丈夫だもん」
「……なんでそんなに冒険者になりたいの?」
そうだ。こんなのみえみえな強がりで、先ほどの尋常じゃない発作はもう見られている。意地を張らず帰ればいい。
僕は冒険者になりたいの?
なりたい、とぼくのなかの一部が言った
あの日、都会の喧騒から離れた森の中が心地良かったから。
全身全霊で生きるクルージベアの迫力にぞくぞくしたから。
仲間と一緒に、自分の力で世界を駆け回り、世界を駆け上る誇り高き戦士達に憧れているから。
赤い炎
赤い瞳
白い髪。
少し冷たくて柔らかい掌。
優しい声。初めての言葉。
「君が居なかったら、ぼくは本当に死んでいたから」
「……いや、ちゃぶ台返しだけど殺しかけたのは私で——」
「いや、君が居なかったら、僕は死んでいたんだよ。死んでなくても、死んでるけど、すこしだけ生き返ったんだよ」
口から勝手に溢れ出す。
『頑張ったんだね』
『えらい、えらい。男の子だね。事情は知らないけど、あなたがとっても頑張ったってことは分かるよ。頑張ったね。凄いじゃん』
誰も言ってくれなかった。自分がそれを求めていることも知らなかった言葉。
「君は命の恩人だから、僕は憂鬱病だけど、君を近くで守りたいっ……くて、その……」
熱に浮かされ、プロポーズのような言葉を言ってしまい頭が真っ白になる。
「とにかく、アリスと一緒に冒険者にならせてください……です」
顔から火が出そうだった。恐る恐るアリスを見る。アリスはきょとんとして、
「くくく……あっはははは!ふふっ……あはは!なんでシオンが私に頼むことになったわけ!?私がシオンに頼んでたのにっ!あははっ」
アリスは笑顔が綺麗だなあ。
「なろう、冒険者。いっしょに。私を守ってくれるんでしょ?ナイトさん」
「っ!?う、うん。なろう」
この広い世界に数多あるパーティのうち、後に「冠無き覇王」と呼ばれることになるとあるパーティは。
今このとき、朝日の差し込む小さな部屋のなかで。
破天荒と内気。
ふたりぼっちの少年少女によって生まれた。