第八話 光藤永遠と実行委員企画
なんと私、光藤永遠は実行委員副委員長に就任できた!三人も立候補者がいて、どうなるかと思ったが意外になんとかなるものだ。これからは副委員長として精一杯頑張ろうと思っている。
今日は三回目の集会だ。委員長の朝日奈先輩、もとい未織先輩とは仲良くなれたが、もう一人の副委員長である星海先輩とはこの前初めて会話した。あの先輩は顔は温和だが、なかなかおかしな経歴を持っている。
中学生になってから英語を始めたらしいのにもう英語がペラペラで、帰国子女の人たちと遜色ないレベルの英語力がある。二年ほど前にオーストラリアに留学にも行ったらしい。その上、大学レベルの数学を趣味でしているらしい。変人という噂を聞いたこともある。
そんなことを考えていたら、集会が行われる予備室についた。もう先輩たちは着いていた。なにか話し合っているようだが、段取りでも決めているのだろうか?
「せんぱ〜い!どうされたんですか?」
「やっほー永遠ちゃ〜ん!元気?」
未織先輩とはこんなノリで話せるくらい仲良くなった。先輩だが私の背が高いのも合って可愛らしく思えてしまう。先輩は顔も整っているしモテるのだろうな。
「光藤さんにも聞いてもらおうよ」
星海先輩が未織先輩に話しかけた。そうだね。と未織先輩が返した。
「今日実行委員を二つの班に分けようと思ってるの。装飾と実行委員企画。それでね、私達三人のどっちがどっちにつくのがいいのかなって。」
「あー。どうしましょうか?」
実行委員の二つある大きな仕事の役割で分けようと言うのだろう。その中にそれぞれ責任者のような私達が入るべきだということだろう。
「それなら...」
少し悩んだ後私は提案した。
「二つのグループそれぞれにリーダーを作るのはどうでしょう?そうして私達は両方のグループの相談に乗ったり、指示を出したりするっていうのはどうですかね?」
「あー。それいいかもね。」
星海先輩が腑に落ちたような感じで反応してくれた。良かった。いい反応が得られて。
「たしかに。じゃあ一旦それですすめよう。じゃあ大体みんな集まったみたいだし。そろそろ始めよっか!」
未織先輩も同意してくれた。そのタイミングで時間になったから、これから集会が始まる。
「こんにちは!委員長の朝日奈です。今日は〜」
さっきから一つ気になっていることがあるのだ。これもしグループの人数が半々にならなかったらどうするのだろう?
「では装飾やりたい人はこっちの方に、企画やりたい人はあっちの方に集まってください!」
どうやら私の心配は杞憂だったようだ。思ったよりきれいに分かれてくれた。数えると...
装飾係 15人
企画係 16人
となった。これはやりやすそうだ。
「じゃあまずここでそれぞれの班でリーダーを決めてもらいます。決め方は投票でもなんでもお好きなように。」
ここで星海先輩がこんな指示を出した。うまくリーダーが決まれば、これから円滑に回っていくからだろう。私達三人は、どっちにもつかずにそれぞれのグループと協力していく感じだ。それぞれの班が話し合いを始めた。私達は教卓のあたりでひとまず待機だ。
「絢夜!投票したいから数えてくれ。」
「未織ちゃん!投票するんだけど集計してくれない?」
「わかった。すぐ行く。立候補は...二人か。それじゃあ...」
「おっけー!音羽ちゃんと萌歌ちゃんの二人ね。じゃあ...」
未織先輩と星海先輩はそれぞれのグループのリーダーを決めに向かった。私は教卓のところで一人考え事をする。この間の試験の時の実際の時間と、頭の中での時間がずれていた現象について考えてみよう。あの後もベースの練習をしていたり、数学をしていたりしてたときに何時間も集中してたつもりでも、数分しか経っていないみたいなことが何度もあった。
色々考えた結果、わかったことがいくつかある。
一つ、私がなにかに集中したときにこの現象は起こる
一つ、大体一時間あたり一分くらいに感じられる
一つ、この現象の後は動けないくらい疲れてしまう
こんな感じだ。まだどれくらい集中したら起きるのかもわかっていない。せっかくだしこの現象に名前をつけよう。う〜ん、そうだ。兄が昔見てたアニメから取って”フォーカス”と名付けよう。確か英語で”集中”という意味だった気がする。なんだか厨二病心がくすぐられそうだ。
「発表します!投票の結果、装飾班のリーダーは舛田音羽さん、企画班のリーダーは藤川楓くん、となりました!これからは各々の班に別れて、この二人を中心に話を進めていきましょう!今日は時間もあまりないので解散とします。ありがとうございました!」
どうやらもう決定したようだ。企画の藤川先輩はこの前体育祭で、応援団長をしていた気がする。舛田先輩ははじめましてだ。藤川先輩はだいぶ背が高い。180cmくらいありそうだ。対して舛田先輩は小柄で、後輩のように見えてしまう。
みんなが席を立って教室から出ていく。そうしたら四人の先輩たちがこちらに向かってきた。
「じゃあこれからそれぞれの班長と今後について話そうか」
「君が光藤さんか。これからよろしくね〜」
「これからよろしくね。光藤さん。」
星海先輩と藤川先輩は仲が良さそうだなと考えながら、藤川先輩と舛田先輩に挨拶を返す。
「装飾はどういう風に進めていこうかな?」
未織先輩と舛田先輩の仲が良いというのは聞いていた。あれ?これ私完全にボッチじゃない?周りはみんな二年生だし。でも未織先輩とは仲良くなれたし、徐々に親睦を深めていこう。
「えっと...先生から聞いた話を伝えるよ。私達が装飾するのはステージ、食堂、テラスの三箇所。」
未織先輩が教えてくれた。ステージは私たちのようなバンドが出演するところだ。そしてこの学校にはテラスがついていて、時々先生たちがコーヒーを飲んでいる。
「あと企画で言うと...去年はみんなで案を出してから決定してたから今年もそんな感じかな。予算とか場所とかはこれから先生とすり合わせをしていくことになるかな。」
星海先輩も去年実行委員だったので、色々教えてくれる。私も来年はあんな風になりたい。
「じゃあ来週は俺が企画の概要を決めようかな。装飾は舛田さんに任せるけど。」
「うん。装飾は場所ごとの担当を決めてデザイン始めてもらおうかな。」
藤川先輩と舛田先輩もしっかりしている。これなら問題はなさそうだ。安心できる。
「それじゃあ今日のところはここまで!次からも頑張っていきましょう!」
未織先輩が終了の合図を出した。今日はここまでだ。家に帰ったらベースの練習を続けよう。週末にはレンタルスタジオでの練習がある。
学園祭まであと21日。なんかもう始まってしまいそうだ。