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第三話 度会朧と結果発表

 俺の名前は度会朧。相榻高校2-βクラスにいる。この学校に来たのは高校一年生からだ。小学生の頃は天才と言われていた。これは自慢でもなんでもない。本当に言われていたんだ。そのまま近くの有名な中学校に入学した。その頃は自分より頭が良いやつなどいないと思っていた。


 今思えば天狗になっていたのだろう。周りには自分より数学ができるやつ、自分より英語を話せるやつ、自分より剣道が強いやつがいた。そいつ等に会ったときにオレの心は砕け散った。


 最初は食らいついていこうと思っていた。けど、簡単に超えれるような壁じゃなかった。それからはやる気も無くなって剣道部もやめた。どんどん成績も落ちていってついには...

 高校入試で落ちてしまった。中高一貫で高校入試は一応ある程度だったので、周りの友達はみんな高校に上がっていった。


 そしてここ相榻高校にやってきた。剣道部に入って剣道を再開したが2年近いブランクは大きかった。別段強くもないはずの相手にも勝てなかった。

 それからはいろんなことをやり始めた。二年生になるとクラスメイトとは一応仲良くなれたし、体育祭のときには応援団長を務めた事もあって、先輩後輩も含めて友達が増えた。


 ただこの時期だけは...

 試験のときだけは。どうしても昔のことを思い出してしまうのだ。そんな事もあってキレやすくなっているようで。この時期は話しかけてくるやつも一年生のときから仲良くしてる楓ぐらいになる。


「よっ。朧。調子はどうだ?」

「良くも悪くも...」

「そうか。んじゃまたな!」


 今日は二学期中間試験の結果発表の日だ。一番気が立ってしまう日だ。

 うちの学校では合計得点上位30人は名前と得点が張り出される。今の時代得点を見せるのはどうなのか?という意見も出て入るが俺はこのシステムが好きだ。一位を取ることができれば過去の自分に顔向けできる気がするからだ。今まで一位を取ることはできていない。毎回五位より上のあたりを彷徨っている。

 ふー。いつものことだが緊張してしまう。すでに人だかりができている張り紙の前へと向かう。


「あっ!」


 つい笑みが溢れてしまう。一位だった。ようやくだ、ようやく取れたのだ。二位を見ると星海絢夜と書かれていた。クラスメイトでこの間カラオケに行ったことを思い出す。あの時も少し気が立っていて今思うと申し訳ない。

「やったな!」

後ろから楓が肩を組んでくる。

「まぁな」

「負けちゃったか...」


 前回一位の星海も声をかけてくれた。

 少し照れてしまう。それにしても本当に嬉しいな。


「おーい。もうすぐ授業始まるぞ〜」

先生が教室に戻るように促してくる。

「あっ。先に戻っといてくれ。トイレに行ってくる。」


 用を足して手を洗う。そして鏡を見たその時だった。


”こんなもんで満足か?”

「えっ?」


 鏡の中の僕が少し変だった。目を擦って見ると、いつもの自分だった。

”こんな学校で一位をとっても大したことないだろう”


 後ろを振り向くと自分がいた。彼を見ようとしてもピントが合っていないように見える。


”俺は過去のお前だ”


 どういうことだ。ありえない。そう思って彼に触れようと手を伸ばす。

触れたと思った。それなのに俺の手は空を切った。驚きを隠せない俺に彼は言った。


”無駄だ。俺はお前にしか見えないし触れることなどできない。お前に話がしたい。”

「どういうことだ?」


 未だに状況が詳しくわかっていないがとりあえず会話を始める。


”どうしてこんな学校で一位を取ったことくらいで満足している?”


 言葉が出てこない。なるほど過去の俺か...一番苛立っていた高校一年生の頃の。


「俺はもう相榻高校の生徒だ。前の学校は関係ない。」

”嘘を付くな!お前はそんな人間じゃないはずだぞ!”

「うるさい!とっとと失せろ!」

声を荒げてしまう。

”また来る”

「はぁ。はぁ。」

 くそが、一位を取ったはずなのにその時の嬉しさはもう消えていた。自分の本心を見透かされていた気がした。あれは結局何だったのだろうか。


「チッ」

まだ気が立っているようだ。早く落ち着けて教室に戻ろう…。


 落ち着く頃には十分ほど経っていた。教室に戻って、先生に軽く謝ってから自分の席につく。先生には悪いが少し考え事をしよう。

 さっきのあの現象についてだ。過去の自分ということらしいが、普通に考えてありえないだろう。

”俺もそう思ってたよ”

「!」

 突然のことで驚いてしまう。

 机の上に目をやると物理的に小さな俺が消しゴムの上に腰掛けていた。とっさに手で覆って隠そうとした。

”大丈夫だよ。俺は君にしか見えないから。”

 小声で話しかけた。

「どういうことだ?」

”あれ、さっき説明されてないのか?俺は五分前の君だよ。君も去年の俺に説明を受けただろう?”

「さっきのやつとは違うのか?」

”俺はあんな意地悪はしないさ”

 さっき出てきたやつより心なしか目元が柔らかい気がする。

「俺はおかしくなったのか?」

”いやいや、そんなことはない。俺も原因はわかっていないんだ。俺より昔のやつに聞いたらわかるかもしれないけど...”

「いつからいつまでの俺を呼べるんだ?」

”数秒前とかは多分無理。けどこの力が発現する前の俺も来れるみたいなかんじかな?俺もよくわかっているわけじゃない。”


 昔の俺もよくわかってはいないらしい。そこでずっと気になっていたことを聞くことにした。


「俺が君を呼んだのか?」

”いや、こっちから出てきた。君が呼んでも来るかどうかはその時の()しだいだからな。”

考えてみる。自分の能力についてもう少し詳しく知る必要がありそうだ。

「これからいくつか質問をしていくけどわかる限りでいいから教えてほしい。」

”おっけー”

「俺の前に現れる事ができるのは何人?」

”同時に居られるのは一人だけだ”

「例えば一人が消えたら、次のもう一人が来るまでにクールタイム要るのか?」

”いや、多分いらない。あんまりひっきりなしに来れるかはわかんないけど”

「もし五分前の俺が来たとして、五分一秒まえの俺は来れるのか?」

”どうなんだろうな?後で試してみると良いんじゃないかな”

「そうだな。色々とありがとう。」

”いえいえ。自分だしな。それじゃ俺はそろそろ帰るよ。”


 最後に一つ気になった事がある。

「そういえば、五分前に戻るのか?」

”う〜ん。そこもよくわかんないんだよね。君も五分前に未来と話した記憶はないだろう?つまり性格は五分前なのだろうが、記憶は残らない。もしくは君自身の中で五分前の俺を作って話してるだけなのかもな。”

色々と考えることができた。彼らはどこから来たのか。どこへ行くのか。わからんなぁ。

”それじゃあまたな!”

「あぁ。また。」


 そう言うと五分前の俺は見えなくなった。さて、能力について考えてみるか。

「度会。話聞いてるか?」

 声をかけられて前を向くとこちらを見ていた楓と目があった。


「あー、悪い。ボーっとしてた。」

「どうしたよ?なんか元気なさそうだな。飯でも食いに行こうぜ!」


楓は地味に感が鋭いところがある。

「そうだな」

今日は大盛りのカレーライスでも食べるとしよう。

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