第二話 光藤永遠と試験開始
今日は二学期中間試験開始の一日目。頑張って一位を取りたいな〜
私は光藤永遠!
相榻高校一年α組の18番。この学校には高校から入った。いろんな先輩たちと仲良くなったから別れたくないな〜。学園祭が終わったら皆さん受験になってしまうし。学園祭では実行委員に入りたいなぁ。できれば、副委員長とかやってみたい。
「試験開始!」
そんなことを考えていると1つ目の国語の試験が始まった。やばいやばい集中しないと。
え〜っと?
タイショウってどれ?対照?対称?対象?
気づくと国語が終わっていた。結局あのタイショウは何だったのだろうか?
次は2つ目の数学だ。一番の得意教科だから頑張りたいな。
「はじめ!」
数学教師で私のクラスの担任の野田先生が試験開始の合図をした。
さて1つ目は計算問題か...
最後の問題が難しかった。どうすればよいのか。方針が全く立たない。私には少し完璧主義的なところがあるようで解けない問題があるとその問題に意識が向いてしまって、他の問題に手がつかなくなってしまう。
「あれ、これは...」
私は一度考え始めると一気に集中してしまうタイプだと思う。
あっ。この点をこうしたら...できる!
何時間考え込んだだろうか?それくらい時間が経っていた気がした。
せっかくひらめいたのに書けなかったな。もったいない。
そう思って時計に目をやると...
「えっ!」
思わず声が出てしまった。考え始めてから5分も経っていないのだ。不思議に思いながら解答を書こうと思ってペンを取る。
何があったのだろうか。まるで時間がハチャメチャに伸びたようだった。
それになんかすごい疲れたような気がする。動くのも億劫だ...
無事に全問解けた数学のテスト用紙を前に回しながら考える。
どういうことだったのだろうか?
そうして私の試験一日目は不思議なこともありながら終了した。後二日。まぁとにかく頑張ろう。
家に変えるとすぐにベースを手に取る。私は中学生のときにベースを始めた。ベースはどことなく私の性に合っていたようで、長い事続けることができている。そしてついに高校一年生になった。
だから、学園祭のバンドに出ようと思う。すでにボーカルとギターは誘ったのだ。バンド名はリードボーカルの九条さんが決めてくれた、"phantom"だ。私はサイドボーカル兼ベースをする。
学園祭は来月の18日だ。それまでに演奏するつもりの三曲を仕上げないといけない。というわけで試験期間中だけど練習は続けようと思う。
「さて、始めようかな...」
一方その頃、高校二年の理系クラスでは物理の中間試験中であった。
「この問題どうするんだっけな〜」
近くから朝日奈の声が聞こえた。声が漏れ出てるのはまずいだろ。後で言っておこう。僕の方は問題はほとんど解き終わった。最近独学で練習したペン回しをしながら考え事をする。廊下で騒いでいた一年生を先生が注意する声が聞こえた。一年生は二年生よりもテスト科目が少ないので、今日の試験はもう終わっているのだ。
去年の僕らはこうだったのだろうな。そう思うと申し訳なく思えてくる。ごめんなさい先輩たち、色々と騒いじゃって。
あれから僕の能力について色々調べてみた。いくつかわかったことがある。
一つ、能力は僕が望んだタイミングで発動できる
一つ、スピードは通常の1/100ぐらいになる(たぶん)
一つ、一回発動したら最大でも3分ほど発動しっぱなしにできる
一つ、連続使用は割とできるが、あまりに連続すると疲れてしまう
今回のテストで使えないかな〜とか考えてはみたものの、自分が動くスピードが上がるわけではないのでほとんど使い物にならない。
たぶん野球やバスケだったら飛んでくる球をゆっくり見れるから使えると思うのだ。いつか試してみよう、スポーツは嫌いだが。
この能力がどうして出てきたかはまだ見当もついていない。超能力というより、武道の達人がゾーンに入って周りの動きが遅くなるような現象の類だろう。
「試験終了です。ペンを置いてください。」
そんなことを考えていたら物理のテストも終わった。なんかもうわからない問題はどうしようもないだろう。最後の一問はもう諦めていた。
席を立って朝日奈のところへ向かう。
「どうだった?朝日奈」
「フッフッフッ。今回の物理は満点だね」
「えっ最後も解けたの?」
「予想があたったんだよ!」
なんという幸運だろうか。試験の山勘はたいてい当たらないものなんだけどな。
「チッ!」
大きな舌打ちを聞いて振り返ると度会がイライラしながら後ろを通っていった。下の名前は何だっけな?
あーそうだ。朧だ。度会朧。高一のときに外部から進学してきた。確か有名な進学校から来たとか言ってた気がする。
意外と交友関係は広いようで、クラスにもだいぶ溶け込んではいるがテスト前はいつも気が立っているような気がする。あまり関わりたくないものだ少し興味はある。クラスは一緒だけど...
「怖かった...」
「根はいい奴だと思うんだけどね...」
この前猫をあやしてるのを見たのだ。体育祭のときも応援団長をしていた。
「まぁいいや今日はもう帰ろう。明日もあるし」
「そうだね。また明日!」
「また明日」
そのまま僕達はそれぞれの帰路につく。
その後は大したことも起こらないまま最後の国語の試験を迎えた。国語は苦手だがある程度は頑張るとしよう。
「これが最後の試験だぞ。はじめ!」
これさえ終わればもう自由だな...さぁ頑張るか!
さて一問目
・・・タイショウってどう書くっけ?
「終わりです。ペンを置いてください。」
毎度おなじみのセリフを聞いて国語が終わった。評論文は意外とどうにかなった。小説が少しきつかった。キャラの心情とかよくわからんし。今日はもう家に帰って寝るとしよう。久々の自由だし。
「おーい」
「どうした?藤川?」
文系の藤川も隣のクラスから帰ってきた。
「今日カラオケいかないか?」
「誰が来るかによるかな」
「俺と山田と...あと朧が来るぞ」
「...。」
度会君が来るのか。さてどうするか。
「じゃぁ、行こうかな」
「おっけ〜。じゃぁ駅前のカラオケ行こう!」
「わかった。すぐ行く」
「3時間でお願いします」
「どうぞごゆっくり」
山田君とは時々話す.間柄だが度会君とはあんまり話さない。
「まずは俺から行こうかな」
そう言って藤川が歌い始めた。彼は歌が割と上手いのだ。
「次いってみよ!絢夜」
「はいはい」
僕はあまり人前で歌うのは好きではない。とはいえ、せっかく来たのだし、歌わないわけにはいかない。
実は一人カラオケにはよく行くし歌うのは好きである。
その後山田も歌い終わった。久々にあのアニメの音楽を聞いた気がして懐かしい。この間17歳になったが、最近いろいろなものを懐かしく感じてしまう。この曲もあの漫画も昔好きだった小説も。
「次は俺か...」
いよいよ度会君が歌い始める。彼の歌は聞いたことがない。
「〜♪♫」
「「「!」」」
驚くほど上手だ。この間キレてたときからは想像できないほどきれいな声で、聞き入ってしまう。
拍手喝采だった。本当に上手い。
「上手いな。朧...驚いた」
歌が終わると藤川が聞いた。
「昔から歌うのは好きだったんだ。文化祭ではバンドにも出ようと思ってる。」
「え〜。まじか。楽しみだな!」
「楽しみにしときな」
少し得意げな様子で、度会君が返す。
やっぱり簡単にキレるような人には見えなかった。帰路につきながら考える。
この間はどうしていたのだろうか?