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聖域の外周
カナメにはその境界は見えない。ただそこから外に歩くと強制的に中心に戻ることからカナメには見えない境界線の内側に目印としてゴーレム達が石を並べた。
「イチカにはどんな外が見えるの?」
イチカはコクリと頷くと土の上に文字を書く。
『外にも同じように森が広がってる。』
「そっか、私にも森に見えてるからよかった。」
ここにきてどれくらい時が経ったのか数えてないカナメにはわからない。3体が仲間になってカナメの中では5、6年過ぎたことは何となく分かった。
「イチカ達がずっと生きられるといいのにね。私の成長もどうやって上がってるのかなんとなくしかわかってないし、このままここにいるだけだとそろそろまずいんだよね。」
ゴーレムを作ると体から何かが取られる感覚。あれが成長の判断だろうと思っている。イチカ達は今安定して100日ぐらいで形成する。
『イチカ達作るの大変?』
「違う違う。あのねーイチカ達は服を着てないでしょ?私の服ね、もう擦り切れてきてるんだよね。制服が丈夫でこれまで大丈夫だったけどそのうちお化けみたいにボロボロになるんじゃないかって思うのよ。まぁ、まだ数年は持つだろうけどこれから長い時間生きるとなると服が欲しいなーって思うんだよ。」
ゴーレム達は何かを書こうとしたが思い留まってカナメを見上げてそっとくっついた。
「そうだよね!見る人なんていないからそのうち裸でもきっと慣れるよね。」
カナメは寂しそうに笑って帰ろうかとイチカとミツバの手を取り鼻歌を歌いながら拠点に戻っていく。カズハは後ろを歩きながら聖域の外を何度も振り返った。
カナメが外に意識を向けなくなってどれくらいたったか。毎日ゴーレムとおままごとのように笑って過ごす。
何度も1ヶ月が繰り返され擦り切れた制服の袖はもうなくなった。聖域の時が止まったように日々同じことを繰り返してイチカ達ゴーレムは柔軟に動けるようになり、4人でたくさん走り回りカナメは聖域の形もすべて把握した。
そんな繰り返しのある日一人の男が聖域に足を踏み入れたのだった。
その日もいつも通りカナメ達は拠点の近くの花畑でのんびり過ごしていた。するとゴーレム3体がいきなり立ち上がりいつも遊びに使う棒を持ち、警戒するように前方を確認している。
「イチカ?どうしたの?なんかいつもと雰囲気が違うよ?」
『カナメ逃げる用意して。』
そばにしゃがんだミツバがさっと文字を書く。ミツバはカナメを連れていつでも逃げ出せるよう2体と距離を取り前方に集中する。




