2
名前を呼ばれなくなるとどうしても人としての境界を越えている気がしてカナメは怖かった。不老不死ではなくなったが未だに使命は達成できないしトウヤ達の子孫も何代も代替わりしてもう黒い髪の生まれる確率も減っている。
マシロは素直にカナメと呼ぶ。
カナメもマシロと名前を呼ぶ。
マシロはまだこの世界に来たばかりだ。だからそこまで残されることに恐怖はないだろう。マシロの生も長い。カナメもまだ成長の兆しはない。これから長く2人は一緒にいる事になるとは誰も思わなかった。
翌日聖域を案内してマシロは興奮して世界樹の下でお茶を飲んでいた。
「本当にきれいで楽園って言葉がぴったりってところですね!」
「ありがとうって言っても私の物でもないけど。」
「カナメがここにいるからここは平和って精霊たちも言ってます。ここの精霊たちは外の世界の精霊と種類が違うのかってくらい穏やかでここにいると私も心地いいんです。」
「そんなに違うの?」
「全然違います。外の子は所詮野良なんですよね。ここは飼い精霊?っぽいそんな感じですね。」
「飼い精霊…」
カナメがそうつぶやくと後ろでブホッと吹いたのはカズハだろう。イチカが慌てて押さえているがカズハはそのまま消えていった。どこに逃げたんだか。
「あの、このカナメの仲間達って。」
「この子達は私のスキルのゴーレムなんだ。」
マシロはチラリと畑の上で漂っているミツバをみる。どうやらペルセそっくりのミツバが気になるようだ。
「私のゴーレム核に魔力を込めた人の姿で生まれてくるんだよね。だからミツバの核はハルヒコさんの魔力で出来てるんだ。」
「え、なら私の魔力も使えば私そっくりなゴーレムが出来るって事ですか?」
「うーん。多分出来ると思うんだけどマシロは精霊だから難しいかも。私の魔力の核で作ったのがローズなんだけど似てないでしょ?」
ローズとカナメを何度か目で往復して落ち着いたのかマシロは話し出した。
「私光の精霊だけど人の考えが強くて半分くらい力を使えないんです。本当なら光の中どこにでも進めるはずなんですけどそれが出来なくてもしかして光の力持つ子が出来るならその子と一緒に世界を移動できるかなって。」
「移動できない?」
「人だから歩くって考えで固執しちゃっててカズハ君みたいに飛んだり出来なくて。」
「ここにはカズハが作った陣があるんだけどそれも使えないかな?」




