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カナメが差す方を確認すると3体はバラバラになって走っていった。石を並べてただ過ぎた日を数えるだけの記録だったが思いのほか気晴らしになった。季節を感じない雨も降らない毎日木の実も取れるそんな生活が暦一つ足しただけで今日は何の日にしようとワクワクする日が出来たのだ。
「この日はイチカが形成されたからイチカのお誕生日ね。」
大きめの石をそこに置くカズハとミツバの日も作る。
「きっと私が成長してまた変わるからそしたら誕生日ずらそうね。」
1ヶ月を30日として区切り過ごしていく。その中でゴーレム達は何度も誕生日を変えながら過ごす。
3体のゴーレムが1度の形成で100日ほど過ごせるようになったころ。ミツバが何かを嬉しそうに抱えて走ってきた。
「ん?ミツバそれ何?」
ミツバはテーブル代わりの木の上にそれをそっと乗せると嬉しそうに踊る。テーブルに置かれたそれは聖域で絶対に手に入れられないものだった。
「え?ミツバこれどこから持ってきたの?」
カナメはそろりと手を伸ばしその加工された物をゆっくりと持ち上げた。
小さくて錆びて折れているけど元はナイフだったものだろう。カナメは血の気が引く。聖域の物ではない物を持ってくる。それはミツバが聖域から出たということだろう。
「ダメ、ミツバ。ダメだよ。聖域からでたらダメ。もしそこで私の力が切れたらミツバ帰ってこれないんだよ?」
聖域には敵がいない。だがここから出たらどうだろう。世界は人が溢れているか、もしかしたら獣がいることもある。
外の世界に出られないカナメはここがすべてだ。
震える手からナイフをそっと机に下ろすとミツバが縋り付いてくる。まるでごめんなさいを言っている子供のように。
「お願い。3人とも私のそばにずっといてね。」
優しくミツバをなでるとイチカとカズハもカナメにしがみついてフルフル震えた。
カナメが外に出たいと歩くと聖域の中心に戻される。しかし、ただ探索するだけなら聖域の中なら自由に歩き回れる。聖域の大きさは半径2Kmくらいだったが時々外周近くを一日のんびり散歩したりもする。
自分が出られないからゴーレム達が出られるなんて思ってもなくてカナメはしばらくゴーレム達がそばを離れるのを嫌がった。拠点の湧き水の場所からゴーレムが木の実を探しに動くだけでカナメも行動を共にすることが増えた。
ゴーレム達はそんなカナメに嬉しそうに手をつないであちこちと散歩に誘った。




