12
少しずつだった。
毎日来ていたトウヤが2日に1度になり少しずつ間があいてアキラが月1になり気が付いた時には3ヶ月トウヤの顔を見なくなっていた。
カナメに分からないよう違和感がうまれないよう少しずつ。そしてカナメが気が付いたのは転移陣を書き換えて3年目の事だった。
「最近トウヤさん達来ないね?」
カナメの言葉にイチカが振り返ると頭を傾げた。
「あ、そっか。僕は一緒に外で狩りをしてるから気が付かなかったけど母さん会ってない?」
「2、3ヶ月会ってない気がするんだよね。トウヤさん忙しそう?」
「確かに忙しそうではあるかなぁ?騎士団の訓練とかも引き受けちゃってるし、僕も昔ほど長い時間は一緒にいられないな。」
「そっか、2人とも生活があるもんね。」
仕方ない仕方ないと自分に言い聞かせるカナメをイチカ達は困ったように見つめていた。
そんなある日カナメ達がのんびりお茶を飲んでいるところにカズハがまたドアを蹴り開けて入ってくる。
「カズハぁ、ドアはぁ開ける物だよう。蹴っちゃだめだよう?」
ミツバがのんびりお菓子に手を伸ばしたその手を握ると引き上げるように立たせた。その時やっとカズハの顔を見たカナメ達はあまりに真剣な顔をしていて驚いた。
「カズハ?どうしたの?」
「母さん、父さんの気配がおかしいんだ。俺ちょっと父さんのところに行ってくる。ミツバついてこい。」
自分で歩くと騒ぐミツバを浮かせたまま一瞬で転移していったカズハを見送って慌ててカナメは振り返った。
「イチカ、トウヤさんに言ってきて!カズハの言葉そのまま伝えてもいいから!」
「わかった。サクラ、ナナキ。母さんを頼んだよ。」
「わかってる。サクラ、ロッカ達を室内にヒマワリはローズを連れてきて!」
分かったと残りの子供達と一緒に走っていく姿を確認してナナキはカナメを振り返る。
「母さんもローズと一緒に家の中で待っていよう?」
「ローズを連れてこなきゃいけない状況なんだね。大丈夫私はここで待つよ。」
ローズは最後に生まれた上級核の女の子だ。カナメの魔力だけを入れた核だったが、狂戦士のスキルを持って生まれた。核事態にそのスキルが入っていたのだろうとみんなは残念がるカナメを慰めたのは思い出だ。そして常に森での狩りをしていてイチカ達より力の使い方によっては強い子だった。カナメの魔力が詰まった核で出来た唯一のゴーレムなのだが、ローズはカナメには似なかった。似ているところと言えば髪が短いことくらいだろう。
ローズがカナメに合流すると同時にイチカがトウヤを連れて帰ってきた。
そしてそこにいるみんながトウヤが抱えているものに驚いて固まった。
「アキラに何があった!カズハはまだ帰ってきてないのか?」
あたふたしながら隣の陣に乗ってアキラの国に行こうとするのをイチカは腕を掴んで止めた。
「イチカ離すんだ。アキラの状況確認に行かなくては。」
「父さん落ち着いてください。まずはその左手で握っているものをゆっくり僕に渡してください。」
トウヤがふと視線を下ろせば左腕の中には2歳になる自分の孫が抱かれていた。




