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カナメがそっと手を伸ばすとイチカも手を伸ばして指先が触れ合う。これは形成した時必ずやるあいさつのようなものだ。
「イチカ、お帰りでいいのかな?」
「はい、お母さん僕ずっとお話したかったよ。」
イチカはカナメに笑いかけると同時にぎゅっと抱き着いた。カナメはそれに人の温かみを感じてまた加護が増えたのだった。
「それにしても、人型通りすぎて人になるとは思わなかったな。」
「そうだね。俺としてはトウヤに色以外そっくりなのが気になりすぎるんだけど、ちょっとトウヤ、急いでアキラ呼んできてよ。」
「あ、ああ。」
トウヤも衝撃が大きすぎたのか考える前に動き出したようだ。トウヤがフラフラと出て行ったあとカナメは胸辺りまで大きくなったイチカにとりあえず服を着せた。
ご機嫌に服を着るイチカをジッと見つめるハルヒコは無表情の中混乱していた。スキルで作ったゴーレムはこれまでどんな記述にも魔力が多いと人型になったとはあったが人になったとはなかった。はたしてカナメのゴーレムはただのゴーレムなのか。ハルヒコの知るこれまでの記述とはかけ離れていた。そしてこのイチカが人の命令で動くようにも見えないのだ。
完全な子供がそこにいた。
「イチカ?ちょっと話を聞いてもいいかな?その姿が俺の知識にないから教えてほしいんだ。」
服を着てカナメに甘えまくっていたイチカは振り返るとにこりと笑い頷いた。
「お母さんも座って、僕お母さんと一緒にお茶を飲んでみたかったんだ。」
トウヤに入れたお茶をイチカはもって笑う。ハルヒコはお茶を飲むイチカに驚いたがとりあえず話を優先する。
「イチカはカナメの子供だったのかな。」
「そうだよ。僕はお母さんの子供だったの。核を入れてくれてありがとう。核の中にトウヤさんの魔力がたっぷり入ってたから僕はトウヤお父さんとカナメお母さんの子供だよ。」
ハルヒコがお茶を噴き出した。
「え、トウヤさんがお父さんなの?」
「そうだよ。お母さんはお母さんだけどもしかしたらお父さんはハルヒコさんかアキラさんだったかも。」
「え?俺の魔力も入れられるの?」
「核に魔力を満たしてくれたらそうなってた。僕の核はトウヤさんのそばでずっと魔力を溜めてたみたい。貴重な魔獣の核だったこととそれに込められた魔力がトウヤさんのしかなかったからこの姿になったんだよ。」
「じゃ、私の魔力はどこにあるの?」
イチカが少し困った顔をしてカナメを見る。
「トウヤさんの魔力が多すぎてお母さんの魔力は形成だけに使われたから多い方に引きずられてお母さんに似れなかったの。」




