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しばらく座りこんでいたが動かなければ何も進まないと腰を上げ歩き出す。
「さっぱりわからないんだけどこれって死んじゃったってやつなのかな?」
特に怖そうな森でもないし獣も虫もいない。確かに遠くから鳥の声が聞こえるが見回しても見当たらない。
「なんなのよー。さっぱりわからないじゃん。」
少し拓けた場所に出たカナメは手ごろな岩に座り込む。そして握ってる紙をまた見る。
「もしかしてだけど私不老不死になったってこと?死なないとか死んだ人間に言えること?」
何度も紙を眺めてみるけど書いてる文字も変わらないし増えることもない。そして残念なことにカナメはファンタジー小説をあまり読まない部類の人間だった。
「会いに来るって言ってたから待ってれば何とかなるのかな?」
泣きそうな顔で最後に手を伸ばしてくれた彼を待つのも手だなと、カナメは立ち上がり待つための拠点を作ることにした。
日が高い位置にあるのを確認するとまた歩き出す。とりあえず食べられるもの飲むことが出来る物を探さなければ生きられないだろうと歩き回る。
小さな湧水を見つけそこを拠点にすることにして木の根元に枯れ葉を集め日が暮れる前に座り込んだ。
「疲れた。死んだのになんで頑張ってんだろう。とりあえず明日は食べ物探さなきゃ。」
カナメは木の根を枕に枯れ葉に潜り込んで眠り込んだ。
何度も目が覚めたが無理やり眠り朝が来た。湧き水で身支度を整ると場所が分からなくならないように棒を拾って歩いたところが分かるように線を引きながら進みだした。
「これはっ! 意味がないっ!!」
元の場所に崩れ落ちたカナメは少しだけ心が折れそうだった。
どれだけ進んでも元の場所に戻ってくるのだ。方向を変え何度挑戦しても最初に座り込んでいた場所に戻るのだ。
「なにこれ、なにこれ、なにこれ。」
悲しみなのか悔しさなのか分からない震える手を握りしめてカナメは泣きそうなのを我慢する。
「これが聖域なの?聖域ってもしかして自然の監獄?出られないってこれから私どうやって生活していけばいいのよー!」
地面を何度叩いても返事はない。怒ればいいのか泣き叫べばいいのかわからない。そしてひとつだけわかることがあった。
「私家族の事何も覚えて無くない?」
真っ白な空間であった3人の顔は覚えてる。学校の名前も住んでた街の名前も何も思い出せないのだ。そしてそれを不安に思ってる程度なのも不思議だった。
そして日が落ちる頃また一つ気が付く。
「あはははは、私食べなくても死なないのね。」
お腹が空かないのだ。朝少し湧き水を口に含んでから何も食べてないのに喉の渇きも空腹も感じない。ある意味便利な体のようだ。
ふてくされたカナメは昨日と同じように転がると眠りについた。




