2章ー1
「カナメ、これがよく食べられてる野菜だ。」
「うわぁ、これが実でこっちが種?」
「ここならいつでも育つだろう。出来た畑で育ててみるか?」
「はい!」
トウヤ達が聖域にきて2ヶ月が過ぎた。アキラが魔法で耕した畑にトウヤが持ってきた種をまいて育てる事になった。
それもカナメがお腹が空かない、と食に欲がまったく無くなっていた事に慌てた3人が加護を外すためにいろいろと始めた一つだった。
この2ヶ月でカナメ達のぎこちない関係もかなりいい感じに修復されてきた。毎日3人は転移で聖域にいろいろと興味を引きそうなものをもって現れる。そのおかげでアキラが持ってきてくれた家はすぐ物で溢れ、家と同じ大きさの倉庫を横に持ってきたくらいだ。
カナメが少しだが嬉しそうな顔をすると3人はほっとしたように笑う。同じ世界から同じ時間に飛ばされトウヤ達だが3人はカナメを娘のように感じていた。
カナメがトウヤとゴーレム達と畑で種まきをしてる横でハルヒコとアキラはお茶を飲んでいる。
「ダメだったか。」
「あぁ、カナメの世話をする女官がいたらいいなと思ったんだけどね。転移陣にはじかれたよ。」
「って事は聖域に来れるのは俺らだけって事か。きついな。」
カナメは永遠を生きる。しかし自分達はこの生に終わりがあるのだ。どれだけ願ってもこれだけは変えられない。
「ゴーレムが外に出られるのはわかってるけどあの見た目じゃねぇ。街についたら攻撃対象だよね。」
ハルヒコが頬杖をつきながらまるで親子の戯れのようなトウヤとカナメを見る。カナメの加護はまだ発動したままだ。数値は少しずつ下がってきて安心ではあるが油断が出来ない。
「とりあえずやれること探さなきゃね。カナメが笑って過ごせるようにね。」
「ああ。」
「ハル!こっち来てくれ。」
トウヤが手を振ってハルヒコを呼んだ事で2人は話をやめて畑に近付く。種の蒔き方があってるか聞いた後アキラがシャワーのように水を撒く。
「俺がいない時は湧き水を汲んできて撒くんだぞ。」
ゴーレム達が頭を上下しながら楽しそうに畝の間を移動している。3人には見分けがつかないがカナメは名前を間違えることはない。
ゴーレムはいつも子供のようにはしゃいでいた。ハルヒコはゴーレムの知性の高さにこれまで見てきた資料と違う点がいくつもあって賢者の知識を上書きしながら眺めていた。
「カナメ女神の紙だが修復が難しい。同じものは出来ないのだがあれを媒体にマジックアイテムを作ってもいいか?」
「どんなものが出来るの?」
「鑑定に近いものが出来ると思うがまだカナメの許可を貰ってからと思って止めてある。」
「はーい。私も自分のレベル知りたい。」
「出来るといいな。」
トウヤはカナメの頭をポンポンすると少し笑った。




