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夏が終わり過ごしやすくなったこの頃。
ある街の道路が陥没して3人の男子高生と1人の女子高生が犠牲となった。
大きな事件として世間を騒がせたこの事も半年もすれば世間からは静かに消えていった。
カナメがふと顔を上げるとそこには背中が見えた。自分が寝ている事に気が付き体を起こすと周りを見回す。
何もない。
それがカナメの感想だった。ただ、背中を向けた学生だろうしゃがみこんだ人が3人見えた。
それ以外真っ白な部屋だった。
頭が働かずぼんやりと背中を見てると1人と目が合った。
「え?だれ?」
その瞬間残りの2人が振り返る。カナメは何が起きてるのかわからず座り込んだまま3人の顔を見る。多分同じ学校の生徒だろう、制服も顔も見覚えがある。
「え?もしかして巻き込まれた?」
「やばくない?時間ないよ??」
3人が慌てだしたがカナメは訳が分からず動くことも出来ない。
「ごめん。説明してる時間がないんだ。この中から2つ選んで!」
1人が近付いてくると紙を目の前にひらりと広げた。カナメは受け取るとその紙を見る。
「読めないんだけど?」
「「あー!!」」
「女神様!この子にも翻訳!!」
『時間はもうありません。翻訳が付くと同時に飛ばされるでしょう』
「やばいじゃん。ね、この中から2つとこっちから1つ選んで!じゃないとスキルが使えない!」
1人にバンバン床を叩かれてカナメはビビりながら適当に2つ選んだ。
「え?やばくね?不老不死選んだぞ。」
「時間無いからこっちも!」
焦るようにもう1枚の紙を差し出される。それもそっと一つの文字と認識されてない記号のようなものに触れる。
「聖域?え、これって」
『時間です。それでは勇者達。この世界を頼みます。』
ふわりと温かな風が4人を包み込む。
「ごめん!絶対会いに行くから待ってて!」
泣きそうな顔でカナメに手を伸ばした子に手を伸ばそうとしたらそこは森の中だった。
「え?」
座り込んだ下から感じる草の感触。風が揺らす木のさざめき。遠くから聞こえる鳥のさえずり。
「え?」
カナメはキョロキョロと周りを見回すがまぎれもない森の中。
手には先ほど渡された2枚の紙が握られていた。そこには3つの言葉が残っている。残りの記号は消えたようだ。
「不老不死と、ゴーレム形成?こっちは聖域?これ何?」
カナメの異世界生活が始まった瞬間であった。




