三十八話 出発
「ラティ、そろそろ起きろ、もう着くぞ」
ヘルさんの声で目を覚まします。あまりに快適な馬車の中でゆっくり寝てました。
全く揺れない馬車に自動で歩く馬さんゴーレム。
空調魔法で快適温度、広さも十分でベットは置けます。
「本当に規格外です」
揺れない馬車くらいは想像してました。まさかここまでとは思いません。ここに住んでもいいくらいです。ヘルさんと二人で。
ダメです。完全に乙女入ってます。うー。
「ラティは飯どうする?」
ご飯だけは選択肢が無いのです。ヘルさん特製グロ飯か、私の焼くだけご飯です。勿論自分で作ります。
「私もちゃんと料理できるようになろうかな」
カエルの足を食べるヘルさん、魔物の方がまともだと思いますよ。
移動しながら料理は出来ます。今日もオークステーキです。ソースは市販品です。寝起きですし、三枚でいいですね。
「ラティ、いやなんでも無い」
わかってますよ、何が言いたいか。全く変わりません、でもそんな関係も嬉しいと思ってしまうのは重症です。
「ラティ、戦闘準備」
まだご飯途中です!ご飯を邪魔するゴミは焼却です。
「なんだ?幼女?ハズレだ」
「俺貰っていいですか」
「少しは足しになりそうだな」
「燃えろ」
ヘルさんの一言で終わりです。って私出る意味無しです。
「準備だけで出てこなくて良かったぞ」
だから言ってよ。まあ言っても出ますけど。やっぱり心配ですし。
「ほれ、冷める前に食っちゃえよ」
ご飯には罪は無いですし、美味しく食べることは義務です。先に戻りますね。
「でもヘルさん、なんか盗賊多く無いですか?」
ラフディアに入ってもう3回目です。全て瞬殺です。宗教国ですから、基本、税では無いはずです。寄付の形をとりますが、それでも生活が苦しくなるほどの寄付はしないはずです。
「あれはこの国の者では無さそうだな」
「だとすると、マギカ?」
アドベンスは、税率は高く無いですし、そもそも冒険者の国です。農業も盛んですが、国が広いので十分な農地を確保出来ます。
それに米があります。初代クラウド公爵が広げた米作ですが、冒険者の国以外では上手く育たなく特産品です。貧困で盗賊にはなろうとは思わないと思います。
「聞いた話だと、マギカは荒れてるらしい」
マギカはいつも問題を起こす迷惑国です。
1500年前は大陸一の大国で、魔法力で大陸統一を夢見ていた国で有名でしたが、その後とんでもない不祥事(原因不明)で没落寸前で、なんとか持ち返した国です。
一部では未だ最強国と思う思想が残り度々内乱が起こります。寒い国で農作物が育ちにくく、輸入で賄うため、センターポート並みに貧困国(王族の財布くらい)です。
「唯一、人神様が訪れなかった国だからな」
「え、本当ですか!初めて聞きました」
ビックリです。どんな書物も全国を回ったと書かれていましたし、母国の秘蔵の書物にも書かれてます。
「ヘルさん、どうしてですか?」
気になります。どうして訪れなかったのか?何故知ってるか?ワクワクです。
「いや、師匠が言ってたんだ。師匠はマギカの事好きじゃなかったみたいだからな、嘘かも知れないけど、あの国だけは、人神様が名前をつけなかったって話は知ってるか?」
「そんな話知りません、もしかして他の国もそうですか?センターポートとか」
なんで知ってるのですか?歴史学者ですか?
「そうらしいぞ、今残ってるのは、アドバイスとセンターポートだけだな、多分。後に国は合併や滅んだりで、名前は変わったはずだぞ」
そうですね、歴史を紐解けば、共和国化や母国の周りは一度滅んでますね、まあ滅ぼしたというのが正解ですね。
生きていればヘルさんの師匠さんに会いたかったです。ロマンがあります。
「さあ、ラフディアの都市、ディアブロウだ」
師匠 「意外と早かったな」
灰子猫「最後まで洗ってくれんか?」
奥さん「懐かしいね、ディアブロウ」
師匠 「そうか?」
奥さん「そうです。5日振りです」
灰子猫「そういえば行ったのじゃな」
師匠 「いつのまに?」
奥さん「変な感じがしたからパンチしてきました」
師匠 「そうか、いいことしたな」
奥さん「はいです!」
灰子猫「パンチなのか?屋敷ごと粉砕したような」
師匠 「早く白くしてやるから黙ってろ」
奥さん「今度はピンクです、後でとってきます」
灰子猫「やめて欲しいのじゃ」
師匠 「まあ、作者次第だな、じゃ次回予告よろ」
奥さん「次回予告です。次回『ディアブロウ』です」
師匠 「そういえば、出掛けないと」
灰子猫「逃げるな!」