十八話 謁見
「ヘルさん!どっちが良いですか!」
私は二つの着ぐるみを見せます。緑と赤です。
今日は王様に謁見の日です。人身売買の摘発に貢献した特別報酬をもらえる日です。
「ラティ?どうして着ぐるみなんだ?」
当たり前です。今回活躍したのは緑です。でも今巷では緑の悪魔が流行っています。流石に悪魔の格好はどうかと思ったのです。だから赤も用意しました。
「着ぐるみを着ないと言う選択は無いのか?」
「無いです」
赤を着て『緑では無いのか』と言われたら、
『脱皮しました』と言うつもりです。
脱皮なら中の人が出ないか?と言うかもしれませんが、
中の人などいません。世界自然の摂理です。
「あー、緑でいいんじゃね」
投げやりですね、ヘルさんは赤で行きますか?
なにか開くかもしれませんよ。
緑は先日クリーンの魔法で綺麗にしてヘルさんが洗濯してくれました。石鹸のいい匂いです。
では準備しましょう。緑が大地に立ちます。
「なんで何度も止められるのですか!やっぱり緑だからですか!」
城に入る前も入った後も何度も止められました。ひどい時は騎士さんに囲まれました。
その度ヘルさんが止めてくれましたが理不尽です。
「ラティ、理不尽って文字を辞書で勉強した方がいい」
酷いです!理不尽ぐらい知ってます。プンプンです。
「面をあげよ」
王様の声で顔を上げます。
「此度は人身売買の件ご苦労であった。褒美をだそう」
久々の王様です。三年ぶりでしょうか?変わりませんね。王女の時代にあった事があります。一家でダンジョンにて生活費を稼ぐのに年一回くらいで来てました。お母様と王様は仲良しさんで、拳で挨拶するのが常識でした。大体お母様が勝ちます。無敵の浮気撲滅拳です。拳でも足技です。
「報酬は要りません、民の為に当たり前の事です、どうか民にお使いください」
うん、常識です。報酬は欲しいですが、着ぐるみ着ても一応王族です。常に民の為です。
何、ヘルさん、驚いた顔して。
「ふむ、一応確認だが、ヘルとラティだったかな」
「私はラティでは無く、ガチ・ビーンと言います、ラティより活躍したのは私だと言われ参内致しました」
なかなかいい名前だと自負してます。ちなみに赤は、モッコリです。
「そうか、ガチ・ビーンか。其方は何処の国のものだ?」
「私は遠いお空の国からやってきました、ビーン国の王子であります」
王子なら礼儀正しくても問題ありません。
「そうか、王子か」
王様が悩んでいます。どうしたのでしょうか?
きっと王子だと思わなかったのでしょう、なんせ着ぐるみです。
「よし、報酬は我が第三王子と婚約だ」
はへ?どうしてそうなるの?王子と王子結婚できませんよ。第三王子様はそっち系ですか?
それに私はお兄様の物です。
「ラティ、どう聞いても女声だ、王子は無理がある」
だから早く言ってください。注意事項の一つです。来る前に教えてください。
「理不尽だ」
何ですか?ヘルさん、喧嘩売ってますか?いいですよ。育毛剤燃やしますよ。
「と言っても、無理には言わん、暫くこの国にいるのだろう。息子も冒険者だ、そのうち出会うだろう、その時考えれば良い」
流石王様です。さす王です。しかし、中の人など居ませんが、どうして着ぐるみを着たのが女って姿も見ずに決めましたね。即答でOKしたらどうしたでしょうか?見たかったですね。
王様が謁見の間から出ていきます。王様が出るまで私たちは出れません。
「よく似てる」
私は王様を見ました。王様?聞こえないはずの距離での声、でも王様の声でした。
気のせいでしょうか?昔も王様にはお母様とよく似てると言われました。懐かしさに思い出したのかもしれません。
「はー、ラティ。人たらし」
何ですか!何処が人たらしですか!この緑を見てそう思いますか!ヘルさんも赤を着て下さい。
師匠 「ガチャ・ビーンか、似てるな」
?? 「王の真似か?」
奥さん「可愛いよね、ガチャ・ビーン」
師匠 「まあ、そのうちバク宙するな」
?? 「ワシも出来るぞ」
奥さん「赤も見たかったな、旦那様着てみてください」
師匠 「名前がな・・・」
?? 「お主のはちょっこりじゃ、安心せ」
師匠 「ちょっとお話ししようか」
?? 「待て目がマジじゃ、冗談じゃ、タワーじゃ」
奥さん「もこもこいいな」
?? 「次回予告しなくてはならないのじゃ」
師匠 「それは嬉しい俺の奥さんの仕事だ」
奥さん「次回予告?していいの?」
?? 「次回予告じゃ、次回『ダンジョン救出』じゃ」
奥さん「私の仕事!」
師匠 「生き地獄、覚悟しろ」
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