二つに一つ
意識がまどろむ。
私は目を覚ますと、机で眠っていた。
「大神さん。次移動教室ですよ?」
「大地さん……?」
ここはどこだろう。
私はがばっと上体を起こす。見慣れたいつもの教室。異世界じゃなかった。
「あれ、私……狼になってたはずなのに」
「??? いつまで夢見てるんですか? そろそろ授業が始まりますよ」
「そっか、夢だったんだ」
あの異世界はすべて私の夢だったんだ……。
キースさんも、誰もかれも私の夢の存在。それを夢見ていただけ……。でも、なんとなく楽しかったという記憶があるのはなぜなのだろう。
夢でよかった……わけがない。
あれはたしかに私がリアルで体験した出来事なのだ……。夢オチだなんて許されるはずもない世界なのだ……。
私が自問自答していると、教室においてあるスピーカーから女性の声が聞こえてきた。
「そうです、夢ではありません」
その瞬間、目の前の光景が一気に変わる。
私はいつものような人間の姿ではあるけれど、ここはたしかに異世界だと確信が持てた。やっぱ夢じゃなかったんだな。
「……夢じゃなくてよかったぁ」
「感想がそれですか?」
「えへへ。やっぱあの世界楽しかったから……夢じゃなくてよかったんですよ。で、シャンバラ様が目の前にいるってことは私死んだんですかね」
「はい。精霊王などの回復がむなしく……。あなたは死亡しました」
「二回目ですね、死ぬの」
まぁ、死んでしまったものは仕方がない。
気になるのは私の行く先だ。
「で、私はどこへいくんですか? あの世? 今度は記憶を失って転生ですか?」
「いえ、あなたには残された道が二つあります」
「えっ?」
「本来は選ばせませんが……。あなたには少し借りのようなものがあります。人間に戻してあげれなくて申し訳ありませんでした」
「い、いえ、女神さまが謝ることでは……」
「あなたに残された道は、このまま記憶を失って転生するか……今、精霊王が行っている精霊の儀で精霊として蘇るかの二択です」
……精霊王様、そういうことしてるんだ。
たしかに、精霊王がそういうことして精霊として復活させるとか言っていたけどそんなことできるのかよ。
いや、本来ならできないんだろうな……。精霊王としてはやってみせるという覚悟はあったようだけど。
「まぁ、私としての答えは迷わず後者です」
「精霊として蘇りますか? 精霊として蘇ったら……悠久の時を生きなくてはなりません。その覚悟はありますか?」
「……まあ、なんとかなります」
「楽観的ですねぇ」
女神さまは笑っていた。
楽観的に行くしかない。私はそういう人だし……。そういう時に楽観的にいないと精神が辛そうだし。
「まあ……死んで、別れの言葉もないままにキースさんたちとは別れられませんし、精霊王様なら私の存在を消すことだって出来そうですから……気長に待ちますよ」
「そうですか。わかりました。ただ、次死んでしまったらもう選択肢はないということは了解してください」
「わかってます」
「では、お行きなさい」
そう言って私の足元が光り出す。
「シャンバラ様」
「はい」
「こんな楽しい世界に連れてきてくれてありがとうございました」




