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串焼きのおっちゃん

 長老たちを連れて王都にやってきた。

 本当に遠かった。3日かかったぞ……。マジで全力で走って3日。かかりすぎだろ。


「ここがシャンヴァーラ王国の王都! 賑わってるぅ〜!」


 エルフからはエルフの中では比較的若い男のアダムスさんという人が代表して来ていた。

 長老もこの賑わいようが少し気になるようで。


「とてもうるさい……」

「そんなもんですよ。エルフの里は静かですもんね」


 静寂に包まれるエルフの里とは大違いでとても騒がしい。王都の中に入ると見回りの騎士が私を見て元気そうだなと声をかけてきた。


「こんなとこで話してていいんすか?」

「いいのよ! 最近王都平和だしー? 混乱を招いていた元凶も捕縛されてなーーんも仕事ないからね」

「平和ボケ……」

「お、言うねぇ〜。じゃあ働こうかな。そちらの御人は誰ですか?」

「私の客……。フードかぶってるのはちょっと理由が……」

「やましい理由でも?」

「ないけど……。なんで尋問されてんの?」

「あはは。ならいい。王都でフード被りっぱなしだと怪しまれるからな。顔に酷い火傷の傷があって見せたくないとかの理由以外じゃあまり被らないほうがいいぜ!」


 そう言って騎士の人たちは走っていく。深く追求しないあたりいい人たちだなー。


「やはり怪しいか……」

「まぁ、顔見せないからね……」

「もうフードなんていいんじゃないですか? エルフってバレても……」

「まぁ、耳以外はそこまだ人間と大差ないし……いいか」


 そういうとアダムスさんはフードを外した。

 やっぱ美形だ。ホストにいそうな感じのイケメン。これでチャラクなくて物腰低いんだからすげえよ。


「で、長老。今のところどうです?」

「わからん……」

「まぁ、きたばかりですからね。あまり楽しめるプランとかは考えられませんが、とりあえず色々歩き回ってみましょう」


 私は王都をとりあえず連れ回す。

 私も全体を把握してるわけじゃないけど、暇があったら散歩しているからそこそこ地の利には詳しくなってきた。

 まずは食べるということで屋台街。ここは冒険者御用達の屋台が連なる通りだ。


 出店している店は日によって違う。怪しげな骨董品を売る人、串焼きなどの食べ物系を売る人、占いをする人とかいろんな人がいる。


 今日は馴染みのある串焼き屋台があった。


「おっちゃーん」

「お、キースんとこのエレキじゃねぇか! お前相変わらずデカいなぁ」

「魔物だからね。肉もらっていーい?」

「おう。地面に落としたやつなんだけどいいか?」

「いいよ。どうせ商品にならないならもらう」

「ははは、ちゃっかりしたやつめ」


 私の口に生の鶏肉が入れられた。

 鶏肉は豚肉とは違って脂っこくないしムチムチしてる。


「で、そっちは? 耳長いが……」

「知り合い。この人たちにも串焼き頼めない? 金ないけど……」

「おうよ! 美味かったらまた今度買ってってくれな! ほら、今焼けた焼きたてだ」


 二人に鉄串に刺さった料理が渡される。

 今日は魔物の鳥の丸焼きで、自家製のタレをつけられてるようだ。

 長老は少し物怖じしていたが、アダムスさんは鶏肉に齧り付く。


「うお、肉の弾力が凄いですねぇー。これは美味しい!」

「そうか? 嬉しいこと言ってくれんじゃねえか! そっちの爺さんはどうよ?」

「……まぁ、悪くない、かの」

「あちゃー、悪くない止まりかー! もっと味を研究しねえとな! お年寄りには少し脂っこいか?」

「いや……」

「この人無口なんで……。すんませんね」

「いいってことよ! そういう奴もいるさな!」


 アダムスさんはペロリと平らげた。

 長老は食べるスピードがゆっくり。その間、アダムスさんはおっちゃんと話をしていた。


「この王都で見て行った方が良いものとかあります?」

「見て行った方がいいもん? ねぇな……。王様がここにいるから栄えてるだけで名物ってもんはねぇな……。強いていうならこの通りだな。ここは庶民の味方の広場よ! 冒険者とか、小さな子どもとかお金握りしめて買いに来るんだ」

「そうなんですか! でも危険じゃ?」

「危険はねぇな。騎士たちがいつも見回ってくれてるし、俺らの方でも怪しいやつは目をかけてるしな。ついさっきもスリ捕まえたんだぜ?」

「すごいねおっちゃん」

「おかげで焦がしたけどな!」


 ここも地域の人たちが子供を守ってるんだな。


「人間はやっぱ支え合いよ!」

「……私たちのような耳が尖っていても助けてくれますか?」

「そりゃ助け合うだろ。耳が長いだけだろ? んなもん関係ねえさ! 言語が通じりゃ助け合えるぜ! 昔はそういうの差別されてきたけどな、今じゃ魔王なんていう奴もこの広場によくきて俺の肉とか食ってくもんだから慣れた!」

「…………」

「見た目が違っても、話がわかるんならそれでいいんだよ! 少なくとも、俺ら平民はそういうのあまりしねえぜ? 貴族様はわかんねーけど」

「そうですか……。ありがとうございます」


 おっちゃん、いい人だなー。

 長老も今の話を聞いて少し思うところがあったようだ。肉を食いながら、話が通じればと呟いている。

 長老も肉を完食した。


「美味かった」

「そりゃよかった! また王都に来たんなら買ってってくれな! 今度はまた味を変えとくからよ!」

「楽しみにしておる」


 長老は少し上機嫌だった。


「差別、しないみたいですね。驚きはされましたけど」

「じゃな」

「お互い、歩み寄って来なかったからねぇ。でも、今このシャンヴァーラは平和だってわかってもらえました?」

「ですね!」

「……わしが悪かったんじゃなぁ」


 長老はそうぼやいていた。


「じゃ、今すぐにでもアンズのところ行って謝りますか?」

「そうする。あの若造の話を聞いて……悪くないと思ってしまった」

「若造……。エルフから見たらそら若造か……」


 しかも長老から見たら何世紀歳が離れてるんだっていう。


「……アダムス、まずはシャンヴァーラ王国だけでも少し交流を持ってみよう」

「長老……! そうしましょう!」










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