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現実は非情である

 精霊の泉は世界樹の麓にあるらしい。

 まぁ、精霊王様がいそうだもんな。というか、絶対精霊王様は私に気付いてるよなーと思いながら精霊の泉にやってきた。

 精霊王様の姿は見えない。


「精霊王様ー! いないんですかー!」

「エレキちゃん、精霊がビビるから……あれ、精霊がなんか慌ただしい? どしたの? ふんふん、彼女に怒られるようなことしちゃって合わせる顔がない?」

「……それが精霊か?」

「へぇ。そんな感じの見た目なのね」

「可愛いですね!」

「え、見えてんの? 誰と話してんだ?」

「……キースさん、ノエルさん、ミリアさんは見えるんですね!」


 ガントルさんだけ見えないらしい。

 まぁ、長老が言うことが本当なら本来はガントルさんのほうが正常なんだろうが……。

 人間にも姿見えるんだ。たしかになんかちっこい光の玉みたいなのとお話ししてる。それはガントルさんに見えないようだ。


「精霊が見えてるなら精霊魔法使えそうだけど……。なぜか精霊王様はエレキちゃんに対して合わせる顔がないって言ってるね。なんで? 精霊王様がそんな状況じゃ精霊も契約してもらえるかどうか……」

「エレキ……」

「精霊王様ー! そんなあなたも大好きですよー!」


 私はそう叫ぶも泉の中から勢いよく出てきて私に抱きついてきた。


「私も好き!」

「これでひと安心」

「ごめんね! あの時はごめんね! キースもあの時はごめんね!」

「いや、いいんです。結果的に魔王の温泉に入れたりしたし、エルフの里にも入れてもらえたから気にしていません」

「心広いのね! お礼に精霊と契約させてあげる! その……ガントルってヤツ以外は精霊と契約できるわね」

「俺だけダメなの?」

「あんた、ろくでもないじゃない。精霊はそういうロクでもないやつは本能でわかるの。もう精霊と契約する素質は消え失せてるわ」


 女遊びがここに来て……。ガントルさんだけハブられた悲しみがあるのか、少し涙を浮かべていた。

 ミリアさんたちは鼻で笑っていた。


「ほら、罰当たった。いつも女遊びばっかするし、秘密のことを酒に酔った勢いですぐ口外するからよ」

「まぁ……納得するだけの理由はありますね……」

「待て待て、俺はともかくこいつもダメだろ!?」

「私は正義なのよ」

「いや……精霊も一応性別があって、雌雄分かれてるんだけど、ミリアはおっぱいが大きい美人さんだから好かれてるかな。性格はそこまで……」

「ほらー! お前はその身体目的じゃねえか!」

「こんの……! でもいいのよ! 体目的でも契約はできるんでしょう!?」


 醜い争いだ……。

 てか精霊も見た目で判断するのか。まぁ、精霊王様が見た目で判断するから当たり前か。


「私はどういう理由なんでしょう? 見た目は客観視出来かねますが、胸の大きさはそこまで……慎ましいですし……」

「ノエルは単純にその清らかな性格ね。キースと同様。よかったじゃない」

「そ、そうなんですね。これもシャンバラ様のご加護ありきでしょうか。ありがたや……」


 ノエルさんだけは単純な性格。

 まぁ、たしかにこの中で一番いいひとそうなのはと聞かれたらノエルさんだ。

 いつもニコニコしてるし、声を荒げることは殆どない。自分の実力不足を嘆くことも多々あるし、向上心が強い優しい人。確かに好かれるわその属性。


「お前らケンカするなよ……」

「精霊王様。精霊と契約してもよろしいでしょうか」

「ええ、構わないわ。あなたは……地の精霊がいいわね。回復魔法を使うのならその子がいいわ。ほら、お行きなさい」


 茶色い光を放つ精霊がノエルさんに近寄る。


「精霊に手のひらをかざしなさい。そしたら精霊が手のひらに触れて契約完了。あなたも精霊魔法を使えるようになるわ」

「は、はい!」

「わ、私も! 私も精霊と契約したいわ!」

「あなたは……活発だから火の精霊ね。元気な子だからこの子がいいわ。お行きなさい」


 赤い光を放つ精霊がミリアさんに近寄る。

 二人は手のひらをかざした。すると、精霊が光を放ち、姿を変える。

 羽が生えた小人のような見た目になっていた。


「よろしくね! ご主人様!」

「よろしく頼むぜ! ご主人!」

「人型になった……」

「精霊は契約した人の馴染み深い姿でいるの」

「え、人型になったの? 女? 男?」

「どっちも女の子ですね」

「女の子でおっぱいに惹かれたの?」


 私はそうつっこむ。

 いや、巨乳を目指す女の人はいたけど……でかい乳房を持つ女の人が好きな女ってあまり見たこと……。


「いいじゃない。女の子だっておっぱいに夢見るの……」

「精霊王様……なんかとても変態臭い」

「そんな……!」

「私、人間だった時胸はそこまで大きくないんですけど。それでもそのセリフ言えます?」

「大事なのは大きさじゃないの。揉み心地と見た目なの……」


 それそれで変態だぞ。


「俺も見えてるってことは俺も契約できるのか?」

「……できるわ」

「なぜ不満げ……」

「あなたはそうねぇ。この子に癒してもらいなさい! 私含め、色々と精神的ダメージ与えてるし。珍しい精霊よ?」

「白い光?」

「光の精霊よ。光の精霊はそれこそ指導者のような人たちぐらいしか好かれないの。でも、指導者で清い心を持ってるのってそうそう居ないのよね。キースは珍しく、その好かれてる人間」

「……ありがとうございます!」

「いや、いいの。精霊にも好き嫌いはあるし、好かれてるってだけ。ほら、契約しちゃいなさい」


 キースさんは手のひらをかざす。

 キースさんの精霊も人型になった。ミリアさんのは赤い髪で活発そうな女の子、ノエルさんは茶髪のおとなしめの女の子、キースさんは白い髪で少しきつい目をしている女の子だった。


「精霊よ、その人間たちに力を貸してあげなさい。精霊王としての命令よ」

「「「かしこまりました」」」

「精霊王様。ありがとうございました」

「いいの。これでチャラにしてくれる? その、武闘大会の時のは」

「もう既に許しております。今度から配慮して頂けると幸いです」

「うん。する。エレキちゃんもいーい……?」

「私は別にいいんすけど……」

「ありがとう!」


 精霊王様は上機嫌で泉の中に戻って行った。

 精霊たちは上機嫌で契約した人たちの周りを飛び回る。


「ふふ、可愛らしいですね」

「ありがとうございます。ご主人様にそう言われると嬉しいです」

「なんていうか……私と似たような子ねぇ」

「まぁな! あたしゃ元気が取り柄だからな!」

「よろしく頼むな」

「こちらこそよろしく頼む」

「…………」


 ガントルさんだけ精霊貰えてないから暇そうだ。


「……私が精霊のようになってあげようか」

「余計虚しさが増すからいい……」

「じゃ、よに……三人は精霊に名前つけてあげてよ! 喜ぶよ!」

「名前ですか? そうですねぇ……。なら、あなたの名前はアルコバレーノです」

「名前? うーん……そういうの苦手なのよね。まぁ……ルミナリーなんでどうかしら」

「名前か……。ふむ……なら……アニマでどうだ?」


 それぞれ名付けていた。

 ガントルさんはつまんなさそうに見ている。


「ガントル、なんでそこまでクヨクヨしてんのよ。あんた魔法使わないじゃない」

「使わないけど……! 俺も精霊見たい……!」

「精霊王様見たじゃん」

「精霊王様も精霊の括りではあるけど……! 俺らにしか見えないんだろ!? あんたらが精霊と話してる時、俺は一人で話してるようにしか思えないんだよ!」


 視認できないが故の弊害。

 まぁ、側から見たら独り言がすごいんだろうな……。私は魔物の分類だから見えてるけど。


「急に喋り出して俺に話しかけてんのかわかんねえじゃん! 俺だけ仲間はずれ感が凄えんだよ!」

「と言われてもねえ」

「私たちじゃどうしようも……」

「できないね! ま、諦めて!」

「諦めるのを勧めるか……。サバサバしてんな」


 ガントルさん可哀想。現実は非情である。











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