魔王が復活した……
フルクの口で運ばれ、エルフの里にやってきた。
アンズからしたら数か月もたってないうちに帰ってきてるわけだが……。私はとりあえずエルフの里に入っていく。
「うわ……あれが世界樹かよ」
「そう! いいでしょー?」
「なんていうか……森と一体化したような感じの里ね。自然がすごいわ」
「とりあえず私のおじいちゃんに挨拶しよ! 私のおじいちゃん、一番偉い人なんだ」
アンズはキースさんの腕を引っ張り長老の家に入っていく。
長老は重苦しい顔をしていた。
「あれ、どしたん? なんかみんなで集まって暗いね!」
「魔王が……復活したのだ」
「魔王さん?」
話を聞くと、はるか昔に人間の手によって討伐された魔王の魔力を感じたらしい。その魔王にはエルフも散々困らされて、人間に手を貸した珍しい事例。
その魔王が復活したということ。
「キースさん……」
「間違いなく、あいつのことだな……」
「魔王が復活してしまったらわがエルフの里にもまた厄災が降りかかる。早いところまた封印するか殺さなくては……」
「魔王さんいい人だよ?」
「なっ……! お前既に出会ってしまったのか……! よく無事で……」
「いや、一緒の家で居候してるし」
アンズが特大の爆弾を投げつけた。
魔王と一緒に暮らしているという事実。それは長老たちを心配させる一言だった。一つ屋根の下に最愛の孫娘が魔王と居るという事実は誰でも心配するだろうに……。
長老はキースさんをにらむ。
「そなたが居候先の人間じゃな? わが孫をなぜ魔王と一緒にしているのだ!」
「…………」
「おじいちゃん! 魔王さんは悪い人じゃないよ! たしかに昔は悪いことしてたかもしれないけど、私になんかしてきたこともないし、キースさんにはたくさん迷惑かけてるけど……精霊王様もなんも言ってないもん!」
「じゃが! 魔王じゃぞ! 魔王がいつエルフの里を襲撃に来るか……」
「それはないと思います。あの魔王は今現在、人間の味方になるという宣言もしておりますし、実際そういう動きは一度も見せたことがありません」
「そなたの話はっ!」
「おじいちゃん!」
「どうか、信じてはいただけませんか。魔王は昔とは違います。我ら人間はその時代に生きていないために、あなたがたがされたことがわかりませんが、魔王のことを少しでも信じてあげてください」
キースさんは頭を下げた。
魔王を信じてもらうために……。結局、味方してるんだから優しいよなぁ。
「お前、律儀な人間だなァ。迷惑かけられてるってアンズちゃんが言ってるのに」
「迷惑はたしかにかけられておりますが……。でも、一応あれは私の家にいる仲間のようなものですから」
「じゃが」
「長老、いいじゃないですか。危険性はなさそうですし。第一、魔王が復活して昔のようならどこかを襲っている情報なんてすぐ手に入るでしょ? 大丈夫ですって」
ほかのエルフの皆さんもキースさんの援護をしていた。
長老は少し悩んだ表情をして、ため息をつく。
「わかった。今のところは様子を見よう。もし、我らに危害を加えるような素振りを見せたら即始末する。これでいいな?」
「うん……」
「そうしていただけると幸いです。ありがとうございます」
「おぬしのためじゃないわい。孫娘に嫌われたくないからの」
「ですが、そうしていただけたのは事実ですので」
キースさんは深々と頭を下げた。
「で、何しに来たのだ?」
「あ、この人たちを精霊の泉に案内したいの! 精霊さんたち、この人なら好いてくれそうだなーって思ってさ!」
「人間が精霊に好かれるわけなかろう……。まぁ、観光ならばよい。連れて行きなさい」
「やった!」
どうやら精霊の泉に連れて行ってくれるようだ。
許可が出たことが少しうれしいのか、ものすごくノエルさんとミリアさんがワクワクしている顔をしている。逆にガントルさんは少しつまらなさそうにしていた。
「精霊が好いてくれているなら精霊の泉に行った際に精霊の姿が見えるはずだよ! 私たちエルフと魔物はそれが見えるんだ! 魔物も精霊が神聖なものだってわかってるし、仲いいエルフも基本的に襲わないんだよ! だからここは魔物に襲われないんだ!」
「そうなのか。精霊はやはり危害を与えてはならないんだな」
「うん! 精霊に危害を加えたら精霊王様が黙ってないからね! 魔物はどっちかっていうと生存本能で避けてるに近いかな?」
「そうか……。なら気を付けよう。精霊とエレキには」
「あー……」
私そういえば精霊王様の恋人ですもんね。




