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凶暴

 温泉に案内してもらい、キースさん含め四人が一つのお風呂につかる。混浴に抵抗がないってすごいなこの人たち。

 私はあまり毛を濡らしたくないのもあり、ただただそばで眺めていた。


「あー……沁みる。魔王の奴、こんないい場所に連れてきてくれるなんてな……」

「キース、元気になったかよ」

「ああ……。心なしか寝ていたのもあって疲れが吹き飛んだ気がする」


 そりゃ何よりだ。

 すると、そばで見ていた魔族の人たちが突然頭を抱え出す。私もなぜか突然、意識を失いかけた。何かとてつもない力を感じたと思いきや、一瞬で意識を投げ出しそうになった。

 が、これで意識を投げ出したらまずい気がする……!


「どうしたエレキ。入りたいなら……」

「違う……。なんか、やばい……」

「やばい?」

「に、人間の皆様……。お逃げくださ、い……。邪悪な魔力が、我らを……凶暴に……」

「あん?」

 

 その時だった。

 魔族の一人が爪を立てて襲い掛かる。ガントルさんが咄嗟に腕でガードするが、腕の骨が折れた音が聞こえた。


「なんだ!?」

「わかんない……。けど、なんかやばい……。私も自我を保つので精いっぱい……。逃げて……」

「なにかわからんが……逃げるぞ! 服は着ている時間がない! 水着のまま逃げろ!」

「ちっ、少しは抵抗するしかねぇよ! こんな数で逃げられるわけがねぇ! 殺さねぇ程度に戦って逃げる時間を稼ぐからお前らは逃げろ!」

「馬鹿! 腕折れてるのにかっこつけんな!」

「今の魔力……。とても邪悪な魔力ですね。あそこのお城から来たように思えます」

「お城って……魔王がいるところじゃないの?」


 魔王が何かしたのか、それとも魔王になにかがあったのか……。

 わからんが、とにかくやばい。一歩でも動いたら自我を投げ出しそうだ。理性でこの魔力に抗っているが時間の問題かもしれない。


「しょうがない、もう囲まれているしな……。全員、殺さない程度に戦え! 決して殺すんじゃないぞ! 殺したら魔族と人間の溝が深まるだろう!」

「無茶な指示出すなぁ! だが、いいぜ! ノエルよぉ! 俺に回復魔法頼むわ!」

「はいっ! あとで適切に腕の処置をしましょうね」

「エレキはそのまま自我を保ってなさい! あんたまで参戦してほしくないわ!」

「わかった……」


 私はこの戦いを眺めているだけになった。

 私は自分との闘いだな。この支配してきそうな魔力に負けないという強い意志を持たなければならない。

 耐え抜いていると、目の前に突然魔王とマグヴェルさんが現れた。


「すまないな。ちょっと我本気出しちゃった。今、全員の動きを止める。お前ら、体少し重くなるが束縛するだけだ! 危害を加えるつもりはない! この魔法は対象を選べんからな!」


 そういうと突然体が重くなった。

 重力がまるで何倍にも膨れ上がったように、体が重い。が、私は割と動けたのだった。


「エレキ、自我はあるか? お前はこの中でも動けるだろう?」

「ある。理性で耐えてた」

「そうか。ならよかった。Sランクの魔物には我の闇の魔力があまり効かないんだが、お前さんは人間に飼いならされているから心配だったのだ」

「お前の仕業かい」

「これには訳があるんです。こればかりは私は魔王様の味方をさせてくださいませ」

「いいけど……。あ、でもなんか楽になった」

「闇の魔力の効果が切れたんだな。お前さんはSランクの魔物になっているだけありそこまで効果時間はないようだ」


 体がちょっと重い程度のだるさ。いや、魔王の魔法のせいだけど。


「体が重い……っ!」

「すまんな。この場にいる魔族を止めるにはこの魔法しかないのだ。この後訳を話すからしばらくそのままで頼む」

「納得する理由じゃないと許さんぞ……」

「納得させる」


 魔王の目はどことなく真剣な表情だった。










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