魔王様反省しろ
はるか昔から続く武闘大会をぶっ壊したことで……。私は精霊王様に説教することになった。
私以外の言葉を聞かなさそうだしということで。私は精霊王様を座らせて、優しく諭す。うすうす分かってると思うけど、私って怒るのそこまで得意じゃないんだよね。
「まったく魔王様というお方は! いつになったら理解するのですか!」
「でも……」
「でもではありません!」
一方魔王様のほうはというと、ノエルさんたちが急いでこの国で仕事することにしたマグヴェルさんを連れてきて、魔王様の醜態を説明して、説教されていた。
マグヴェルさんも大変だなぁと思いながら、私は精霊王様を優しく諭す。精霊王様も反省してくれたみたいで、ごめんなさいといってくれた。
「私も強く怒りたいわけじゃないし……。いいですよ。これから参加するときは人間の実力を判断して手加減してあげてください。精霊王の様に強くはないんですから」
「わかったわ……。不覚ね……。もう帰るわ……。心の傷が……。世界樹に癒してもらうわ……。それに、世界樹からあまり離れられないしもうそろそろ時間が来るの」
「あ、もうそういう時間ですか?」
「2日前にものすごくデートコースを下見しに来たの。もう時間がほとんどないわ。あと少しで引き戻されs」
といった瞬間、精霊王様が消えた。
引き戻されたな。精霊王様曰く、精霊王は世界樹の心の具現化みたいな存在で、世界樹とは一心同体らしい。
本体が世界樹で、自由に動けるようになった存在が精霊王という認識であながち間違いじゃないようだ。
「こうなったら仕方ありませんね。魔王様」
「わ、我にこの家から出て行けと申すか!?」
「いえ、仕事もまだしていないあなた様が出て行っても生活できるとは到底思えません。キースさんには申し訳ありませんが、私を魔王様の側近として雇ってもらいます」
「えっ!?」
「えっ!?ではありません! あなたの今までの行動を振り返ってみれば当たり前でしょう! ただでさえ今日の出来事でキース様は胃を痛くしてぶっ倒れてますのにいまさら何を言うんですか! あなたを居候させていることは調べればわかられるんです! あなたはキース様の汚点になっているのですよ! 出ていけって言われていない分あの人間は温情が過ぎるほうです!」
まぁたしかに。出ていけって言われてもおかしくはないか……。
魔王様はマグヴェルが近くにいるというのがものすごくいやらしく、嫌な顔をしている。
「わ、我に逆らうか……」
「私を殺しますか? 私はいざとなったらエレキさんとフルクトゥスドラゴンさんに頼んで全力であなたを返り討ちにしますからね」
「ひぇっ……」
「そんな暴君みたいな事いつまでもできると思わないでください! それに、私を討伐する正当な理由がありますか? デュラハン将軍のように人間を滅ぼそうといつ私が画策しておりますか? 私を討伐する正当な理由が勿論あるんでしょうね?」
「……」
魔王様涙目。
魔王軍四天王のリッチーのマグヴェル。ものすごく礼儀正しい。もともと魔王軍四天王だったとは思えないくらい常識人だ。
「うわーーーーーーん! そんなに怒ることないじゃんかーーーーー!」
「泣くんですか? いつまでも泣いて解決するとは思わないでくださいね」
「容赦ねぇ……」
見た目は可愛い女の子の涙にも負けない強い人だ。
魔王様、反論しても勝ち目ないですよ。
「魔王様……。おとなしく反省したらここまで叱られないんですよ……」
「その通りです。エレキさんの言う通りですね。あなたは”でもでもだって”が多すぎるんです! きちんと自分のしたことを受け止めて反省していれば私がこの家であなたの側近として働くこともないですし、ここまで怒らないんです! 人間社会に来たのならまずは適応しなさい! 適応せず好きなことやってるから私がここまで怒るんです!」
「ごめんなさい……」
「謝ってももう遅いです。キース様が起きたら私も住まわせてくれとだけ頼んできます。あなたを制御する人がいないとあの人も可哀想ですからね」
魔王様は絶望しきった顔をしている。
まぁ、デュラハン将軍みたいに今の魔王を認めず、人間に害をなそうとしているわけでもなく、ただただ魔王様を思って叱咤しているだけで攻撃する対象にはできないよな。
敵側に回っていてくれたらどれだけ楽なことかとか思ってそう。残念だが元四天王マグヴェルは人間の味方……。つまりこちら側だということに絶望してそう。
「我の人生も終わりだ……。好き勝手出来なくなる……」
「それを反省しろって言われてんのにまだ反省しないのかよ……」
見上げた根性だ。




