武道大会に精霊王参戦!?
精霊王様と歩いていると、なにやら騒がしい場所があった。
騒がしいのはあのスタジアムのような場所で、私は中を覗き込むと、そこでは大観衆の中、舞台で県を持ち戦っている人たちがいた。
「なんだこれ」
「ふむ、これは武道大会のようね」
「知ってるんですか?」
「なんとなくだけれどね。昔精霊から、人間が剣をもって戦ってる!っていう報告を受けて見に来たの。そしたら王様主催で一番この国で強いやつを決めるとか……そういうのらしいわ」
「へぇ」
この大会では賞金が出るらしく、猛者たちがこぞって出場しているようだ。
この世界じゃ娯楽という娯楽がない。日々仕事に追われていたりする中、こんな大会を開いているようだ。
人々はこの年に一回開かれる武道大会が割と好きなようで、誰が勝つかという賭けもされている。これ試合というより賭け目的なんじゃないの? 競輪みたいな……。
「この大会のおかげでこの時期は賑わいを見せてるらしいわ。ちょっと見ていきましょうよ!」
「いいですよ」
私たちはスタジアムの中に入っていく。
魔法部門、剣士部門、格闘部門、総合部門の四つがあるらしい。ポスターにそう書いてあった。魔法部門はその名の通り魔法だけ。剣士は剣だけ。安全のために木剣を使用するらしいが。格闘は武器や魔法を一切使わず、己の体術のみ。総合は魔法やら剣やらなんでもありの部門。
自分に自信がある人ほど総合部門に行くようだ。そのため、総合部門のほうが猛者が多い。総合部門とほかの部門を掛け持ちで出ることもできるが、体力が持たないで棄権する人のほうが多いってスタッフの人が言っている。
「そういや、今日アンズと騎士団長がちらっと大会とか何とか言ってたな……。もしかしてそれってこれのことだったのか」
今日行くときのこと。
アンズは大地さんの腕を引っ張りどこかに連れ出したかと思うと大会エントリーもうすぐらしいって言っていたし、騎士団長が委員長を迎えに来た際、キースさんに大会に出場させるのだとか言っていた気がする。キースさんももうその時期かって言ってたけどこのことか。
「飛び入りも可能ですよ。ただしそちらさんのみですが……」
「……しちゃおうかしら」
「手加減して殺さないようにね……」
「わかってるわ。じゃ、総合部門で飛び入りさせてもらうわ」
「かしこまりました。では、このエントリーシートをご記入ください」
エントリーシートを手渡される。
エントリーシートは手軽で、名前と出る部門に〇をつければいいようだ。
「精霊王様って名前なんて言うんですか?」
「名前なんてないわ。精霊だもの。エレキが名付けてくれるかしら」
「私がですか?」
「エレキが名付けてくれたなら……私一生その名前大事にする」
「重いっ!?」
まぁ、名前は一生ついてくるものだというしな……。精霊王様の場合一生っていっても終わらないんだろうけど。
名前か……。
精霊王様の見た目は儚げな印象を受けるんだよな。サラサラの銀髪で、垂れ目。まるで今にも消えてしまいそうな華やかさ。性格はその真逆に等しいが……。
うーむ。
「オベロンなんてどうでしょう。異世界で妖精王の名前なんですが、なんとなくそっちのほうがかっこいいかなって」
「いいわね! 妖精王じゃなくて精霊王だけどオベロンにするわ!」
精霊王様はオベロンと記入するが……。
「すいません、この文字はもしかして外国の方でしょうか」
「えっ」
「この文字申し訳ありませんが読めないので、私が代わりに記入いたします。名前はなんていうのでしょうか」
「オベロンよ」
「オベロン様。かしこまりました」
そういって、スタッフの人は去っていく。
「精霊文字で書いてしまったわ。あれじゃ読めないわね」
「私読めたんだけど……」
「そりゃあなたが言語能力っていう能力が備わっているからね」
そういえばそういうことフルクも言っていたような。
言語能力ってすげー。
「それじゃ、時間までゆっくり観戦でもしてましょう」
「そうですね……と、この大きさじゃこれ以上いけませんが私」
「あ、なら人間にしてあげるわ。固定することはできないけれど、一日は人間でいることができるはずよ。女神様なら一週間とか持たせられるでしょうけれど……」
「いいんですよ。精霊王様の勇姿をこの目で見られたらそれで」
「エレキ……! じゃあ、優勝してくるわね! 見ててね!」
張り切っちゃった。
精霊王様が参戦して申し訳ないですね……。国王様……。なら止めろよって思うけど戦う姿もちょっと見たいと思っちゃった。
(人間が精霊王に)勝てるわけねェだろうが!!




