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魔王軍四天王マグヴェル

 魔王による昔の人間王国についての講座が始まった。


「まず初めに、昔は我ら魔族も人間の一種であった」

「魔族……?」

「魔族を知らぬか。ま、無理もない。魔族は絶滅したと思われてるからの。魔族というのはおとぎ話の中だと思ったか?」


 魔族は人間だったということ、ある日突然、人間の突然変異として頭にツノを生やして魔法が得意な種族が産まれたらしい。

 それが魔王だという。魔族の祖と呼ばれているようだ。


「人間というのはツノを生やしていたり、耳がとんがっていたりすると何をすると思う?」

「……差別か」

「そうだ。周りとは違うことによる差別、自分らこそ優位の種族であるというためだけにツノを生やした人間を差別した。我はそれに怒りを覚え、その時の住んでいた領地でクーデターを起こしその領地を占領して魔族国を名乗った。その時からずっと、我が王だった故に魔王なのだ」


 魔族には魔物を操る力があり、また、魔物として人間の国を侵攻し始めたのだという。

 全ての元凶は人間から始まったということだ。


「人間による魔族の差別の恨みは根強かった。今ではあたかも自分が被害者だと言わんばかりに伝えられているのも不服だ」

「……そうか。そういうことがあったのか。俺はそのツノかっこいいと思うんだが」

「だろ? かっくいーのに理解されなんだ」

「なるほどな。たしかに、勇者伝説というのは人間の国を滅ぼそうとする魔王を討ち取った異界の勇者の話だ。その勇者伝説での悪者はまさかこちら側とはな……。これじゃどの文献も怪しいものばかりだ」

「ま、昔の人じゃない限り嘘とは気付けないよねぇ」

「よくそんなことがあって今俺と暮らしているな? 俺は人間だぞ」

「ま、昔のことよ。今のこの国は素晴らしいと思うし、お前はこのツノを見て、驚きはしたが嫌になっていたのは魔王の部分だからな。問題ないと判断した」


 あぁ、まぁ、キースさんいろんな厄介者を押し付けられてるから慣れたんだな……。

 そういう自覚があるのかキースさんは少し頭を抱えていた。


「エルフも居候させてるんだし今更だろ……。俺は見た目で判断はそこまでしないぞ」

「だろうな。貴様は人がいいからな」

「人がいい故に厄介ごとを任されるんだよねぇ」

「違いない」

「うるさい。魔王のことはよくわかったよ。俺もツノは触れないようにはしておく。外出する時は隠して……」

「もう遅いわよ、キース」


 と、ミリアさんがやれやれという顔でいつの間にか後ろに立っていた。


「そいつ、ツノを隠さずに冒険者ギルドに行ってるわ。仕事をさせてくださいと頼んでたみたいよ。今、冒険者はその話題で持ちきり」

「魔王様……。過去のことは私も聞いておりましたが……。隠す努力を少しはなさったほうが……」

「忘れておったわ! 雇ってくれるかわからんなこれじゃ!」

「なんで後先考えねぇんだよ! お前、言いたくないけど割とバカだろ」

「うぐっ……」


 図星?


「バレたか……。昔、魔王軍四天王のリッチーにもそう言われたことがある……。黙ってたら威厳があるんだからとか……。どうせ我は……」

「この魔王、感情の緩急が激しすぎるだろ」

「そうですぞ魔王様」


 どうやらかつての仲間にもバカ扱いされていたらしい。決めるとこは決めるのだが、大事な場面じゃない時は割と何も考えずに行動する節があるようだ。

 と、待って。


「お前誰だ?」

「お前は……! 我が四天王の一人、リッチーのマグヴェル!」

「四天王?」

「魔王様ここにおらしたとは。帰りますよ」

「帰るってどこに?」

「もちろん魔王城でございます。魔王様を保護していただいたことは感謝しております」

「帰るのか?」

「えっ、嫌だぞ! せっかく人間と仲良くなるチャンスであるのに!」

「なら順序を踏みなさい! そこの冒険者から働きたいと言っていたと聞いております! なのに、なぜまだ職を見つけておらんのですか!」


 うわぁ、至極最もな説教。


「わ、我に意見するか!」

「別に人間を滅ぼそうとは私していませんのでデュラハン将軍のように消される心配はございませんよ? むしろ、人間に対して礼儀をわきまえて早いところ職を見つけて生活費だけでも出せと申しているのです」

「至極最も過ぎて反論の余地がない」

「自由奔放に出歩いて職を見つけずに遊んでいてなにが仲良くなるですか! 自分を住まわせてくれている主人に対して礼儀を忘れるくらいなら居候なんかせず野宿の方がいいです! 聞いてますか魔王様!」

「え、いや……」


 魔王も正しいと認識しているのか、敵意を向けてきてない魔王軍四天王のマグヴェルに詰め寄られていた。


「そこまでにしておけ。貴殿は……」

「申し遅れました。かつての魔王軍四天王であり、リッチーのマグヴェルと申します。一応魔物ではありますが、あなたたちに敵意はございません。今の敵は礼儀をわきまえない魔王様なので」

「そ、そうか……。ま、まぁゆっくりでいい。魔王も復活したばかりなんだろう?」

「そ、そうじゃ! 力が完全には……」

「そう甘やかすと図に乗るのでやめていただきたい」

「あ、はい……」


 魔王は味方を失った。可哀想。


「居候は許可してやるからここで説教はするな……。まだ執務が残ってるんだから」

「これはこれは。申し訳ございません! キース様。別室をお借りしてもよろしいでしょうか」

「構わん……。ま、優しくしてやってくれ……」

「善処いたします」


 魔王はリッチーのマグヴェルに首元掴まれて引き摺られて行った。

 だが。魔王は抵抗して、私の毛を掴む。


「いだだだだ!」

「エレキぃ!」

「こんの……」


 私は電気を流すと、魔王はビリビリと感電していた。


「うぎゃあああああああ!!」

「マグヴェルさん、電気すいません」

「構いませんよ。私は霊体なので雷は効きませんから。魔王様、これで懲りたでしょう? 抵抗しないで来なさい」

「び、ビリビリ……」


 扉が閉められる。

 あー、引っ張られた毛が痛い。


「キース、どうする? 割と話題になってるわよアレ」

「どうするもこうするも……慣れてもらうしかないだろう。幸い、冒険者どもは良い意味でバカばかりだからな……。酒飲んだらすぐに忘れる」

「だといいけど……」


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