呪いとは何ぞや
魔王様と交戦し、家に帰ると国王様がいらっしゃっていた。
魔王様は私の上に乗っかり、なんだあの馬車はと呑気なことを呟いている。馬車の馬はこちらに気づいて少しそわそわしているというか、少し怖がっていた。
まぁ……このオーラだもんな。私も狼だし怖がるのは無理ないか。
「飛び越えるか」
私は思い切りジャンプし、塀を飛び越えた。
「エレキ! やっと帰ってきたな。魔王を……ってなんでエレキの背中に」
「若い勇者共の相手をしていたのだ! それで、この国の王がなぜこの我を見に来ている?」
「気にするでない。少々、魔王というお方が誰なのか気になっただけである」
白髭をさすりながらまじまじと魔王を見る国王様。魔王は少しうげという顔をしていた。小声で苦手なタイプだと喋っているのが聞こえた。
何考えてるかわからない顔をしてるの嫌なんだよなぁーとぼやいている。
「魔王は女性だったのだな」
「そ、そうだ。悪いか?」
「いや、我々の伝承ではいかにも男だというように語られていた。少々意外だったもので」
「誰だその伝承かいたの。ぶっ殺してやる」
「魔王」
「あ、いや、説教してやる」
先ほどのノリノリな魔王じゃなく、怒られて少し焦っている魔王。
国王が苦手なタイプというだけあり、苦手なタイプにはぐいぐいいけないようだ。国王はたしかに何考えてるかわからないよなー。いい人なんじゃないかっていうのは割とわかるんだけど。
「一目会えてよかった。私はこれで向かう。私が出歩くのはそこまで好ましくないのでな」
「わかりました。わが屋敷に来ていただき、誠に感謝いたします」
「うむ」
そういって国王様は馬車に乗りこんで帰っていく。
「ふひー。我、ああいう何考えてるかわからないやつ苦手だ」
「笑顔の裏に何かありそう」
「お前らな……。魔王はともかく、エレキは何度か会ったことあるだろうが」
「会ったことあったとしてもいきなりあの魔物が苦手とする匂い嗅がされるのは嫌だよ……。臭いし」
「そうか。そういえばそういうのあったな」
忘れてんじゃないよ。
バリーさんだって臭いのにさ。慣れたとはいえ、不意に来られるとマジで嫌なんだよあの匂い。
「道理で臭かったわけだ。そういうものがあるんだな。きっと聖女の力だな」
「あれ聖女の力なの?」
「おおよそな。王族とはいえどあのような力を持つというのは考えにくいのだ。聖女がそういう強い呪いのようなものをかけたのだろう。呪いとは多種多様であるからな」
「……呪いに知見が?」
「なくはないな。というのも、昔は呪いが流行っていた。呪いというのは魔法の原型だ。今よりもっと昔の時代に生きていた我が呪いを知らないはずがないだろう」
言われてみれば。
そういえば魔王様ははるか昔に存在していたやつなんだよな。今更復活したってだけで。呪いが魔法の原型だとするならば知っていてもおかしくはない。
「姿を変える呪いとか、猫にしてしまう呪いとかはあるか?」
「あるな。そういう姿を変えさせるのが呪いの一般的な活用方法だ。むしろ暗殺者などは好んで使っていたぞ? 自分の体を動物にして暗殺対象の家に忍び込み、中で人間に戻って対象を殺すのだ。それはもう見事な手腕であった」
「……怖い時代だな」
「そうだな。この時代は呪いというものがなくなりかけている。文献には残ってはいるらしいが、呪いの類はあの国王にしか感じ取れん」
魔王様って意外と何でも知ってるな。
「……魔王。この家に住まわせているのだから、その昔のことを事細かに教えてくれ」
「ほほう? 興味があるのかね」
「ある」
「いいだろう! 人類は魔王討伐を美学にしているが本当は美学じゃないところから始めよう!」
「何それ私もちょっと気になる」
「じゃ、エレキも聞いていきたまえ!」
美学にしているが美学じゃないって何なんだ。




