うちにエルフがいるってよ!
私は今現在、こき使われていた。
「ガントルさんのにおいはこの店からするけど……」
「オッケー。じゃ、とっちめてくるわね」
理由は簡単。女遊びをしているガントルさんをとっちめるためだ。
つい先ほど、若い女性が屋敷にエルフがいると聞いたんですけどとやってきた。ガントルから聞いたと言い、ミリアさんとノエルさんはそれはもう大層お怒りで。
エルフの存在は秘匿している。あまり口外していいものではない。騒ぎにならないように秘密にしていたが、酒に酔った拍子で思わずそうこぼしたらしい。
大半の人は信じなかったようだが、一部の人は信じてしまい、真偽を確かめようと屋敷に来てしまったのだ。
で、さすがにマズイと思ったのかガントルさんは逃亡。一週間も屋敷に帰ってこず、どこかにいったからミリアさんが探そうということで匂いをたどらされた。
女って怖いね。ガントルさんの性格も把握してるから王都から出てないのもどんぴしゃだった。
中からはものすごい叫び声が聞こえてくる。
数分後、ものすごくボロボロになったガントルさんがミリアさんに引っ張られてきた。
私の背中にガントルさんを乗せられ、屋敷に戻らされる。
「こいつだけ一人暮らしさせようかしら。口が軽すぎるわ」
「だねぇ。っていうかなんで身内でもなんでもない冒険者の仲間であるだけなのに屋敷にいるの?」
「それ聞きたい? いや、単純な話なのよ。全員、家を買うための金がないのよね」
「金がない? Sランクなんでしょ?」
「それがそうともいかないの。こいつが毎日馬鹿みたいに飲みに行くから金が減ってくのよね。キースが分配金の管理をしているのだけれど、分配しても泣きついてくるのよ。金が足りないって」
「……クズ」
「そう。クズなの。実力は確かだし、人を見下すようなクズではないからまだマシなのよね。昔組んでたやつがいてね……。そいつは自分よりランクが低いのを見下す奴だった……」
ノエルさんたちも苦労してんだなー。
「居を構える金がないのと、Sランク冒険者として拠点が欲しかったのもあって、貴族のキースの屋敷に住むことになったのよ」
「へぇ」
「キースに拠点も済む場所も提供してもらってるから、キースが一番取り分多いのよね。それはいい。問題はこいつの浪費癖……」
浪費癖は治らないよなぁ。
私の中学の時の友達に廃課金プレイヤーがいて、親のクレジットカードで100万円以上課金して怒られたやつがいたな。
そいつが言うには「欲しいキャラじゃなかったんだけどガチャが引きたかったんだよね。課金してガチャ引いてる時が一番生きてる喜びを感じる」と笑いながら言っていた。
金を使うことに快楽を見出してたやつだったな……。
「エレキ、どうにかしてこいつを懲りさせる方法ないかしら」
「うーん……。そういう行為にトラウマを植え付けるしかないんじゃないかな」
「トラウマ、ねぇ。こいついっつも都合いいこと言って飄々としてるからトラウマなんてできそうにないのよねぇ」
「ここまでぼこぼこにされてるからトラウマになってると思うけど」
顔には青あざができているし、目も腫れていて前歯が少し欠けている。前歯って保険効かないから高いんだよなあー。この世界にそういう保険ないけど。
完膚なきまでにぼこぼこにされ、気絶させられている。割とトラウマになってもおかしくはない出来事だ。
「そうね。トラウマになってればいいけど……。でもまたエルフとかばらまいたんでしょうし、とりあえず家に来る客を牽制したほうがいいわね」
ミリアさんは少し辟易としていた。




