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不運な暗殺者

 二人は今日も今日とて強くなるための特訓をしている。

 大地さんも魔法を使えることがうれしいのか、ものすごく魔法の腕が上達しており、委員長も筋肉が付き始めてきていた。


 キースさんは精霊王様に言われたディアモンド公爵家の家宅を王子主導で捜索に向かっており、ガントルさんたちは冒険に向かっていた。

 屋敷には私ひとりとなる。使用人の人はいるが、屋敷で何の用事もない私が一人ぽつんと……。ガントルさんたちについていけばよかったかな。


「ふあーあ……」


 欠伸をして、門のほうを見ている。

 誰か帰ってこないかな……。暇だ。と思いながら眺めていると、血まみれの少女がふらふらとした足取りで屋敷の中に入ってきた。

 

「誰の屋敷かわからないが……少し休ませてもらおう……。はぁ……聞いてないぞ、貴族があんな強いなんて……」

「誰?」

「……っ!」


 少女は血まみれの体を動かしてナイフを構えていた。が、私の姿を見て、ナイフをぽろっと落とす。


「なぜワーナガルムが……。こんな傷だらけでは……勝てん……」

「どうしたの」

「しゃべ……意思疎通できるのか!?」

「うん」

「な、なら話が速い。すまないが、任務に失敗してな……。少し休ませてくれないだろうか。もちろん、少し休んだら出ていくから……」


 そういって、少女は意識を失った。

 ここで寝られてもな。任務ってこの血まみれの格好を見てなんとなくわかった。誰かの暗殺とかそんなんだよなぁー……。引き渡したほうがいいんだろうか。でも、こんな可愛くてまだまだ若い少女の未来が潰れるのは見てられんしなぁ。


 ……キースさんに聞いてみるか。


 と思っていると。


「エレキ! ここら辺に血まみれの少女を見なかったか?」

「血まみれの少女?」

「ディアモンド公爵家に雇われていた暗殺者なんだが取り逃がしてしまった!」

「ならここに……」


 私は視線を向けると、キースさんもそちらのほうを向く。


「我が家に逃げ込んできていたのか!? なんとも運がないやつ……」

「ねぇ、その少女どうするの……?」

「どうするって……捕らえて監獄行きだろうな。ディアモンド公爵家に雇われていたんだからな」

「そっかぁ。でも、そんな若いのに……」

「……あまり同情しないほうがいい。エレキ」


 といわれましても……。


「……しょうがない。情状酌量の余地があるかどうか、話を聞いてからにする。回復を待とう。手当でも先にしてやろうか」


 キースさんは相変わらず優しい。

 私の小屋に運び、椅子に縄で縛り付け、使用人に頼んで身体の調査をしてあらゆる刃物などを没収していく。

 深手を負わせたのはキースさんらしく、自分で傷つけて自分で手当てするとはとぼやいていた。


「……あれ、ここは」

「我が家だ」

「えっ、ばれたの!?」

「そもそもお前が逃げ込んだのは我が家だ」

「えっ!?」


 暗殺者の少女はがっくりうなだれる。


「いつもそうなんだよな……。私って運がないんだ……」

「運がない?」

「この稼業だって最初は乗り気じゃなかったのに……」


 と、涙をこぼしていた。


「どういうことだ?」

「私はお金がなくて……日々街の人の食べ物とか店の食べ物をくすねていただけだったのに……。突然公爵様に雇われて、ものすごい高い賃金を払われてそれにつられていったら暗殺してくれという依頼で……。断ると殺されそうだし嫌々やってただけなんだよぅ……」

「……お前そんな理由で暗殺者してたの?」

「うん……。だって、公爵様が提示した金額はすごかったんだもん! やっぱ周りの人を思うより、お金が必要でさぁ! 体を売る仕事だろうなって思ってそれを覚悟してたのにっ! なんでよりにもよって人殺し!」


 ぼやくぐらいならやめろよ……。

 この暗殺者は相当闇が深そうだ。ただ、いろいろ吐き出してくれているのを見て、キースさんは止めることはなかった。











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