魔力解放
屋敷に帰り、エルフのアンズをガントルさんたちに紹介することになった。
「……すごいわ。エルフなんて初めて見た! ねぇ、エルフって菜食主義ってホント!?」
「野菜は好きだよ! エルフの里の周りの魔物は肉に毒があるから食べれないってだけで肉も全然食べるよ!」
エルフの里の周りの魔物は毒があるのか。初めて知った。
「何歳なんですか……?」
「私はまだ200歳ちょいだよ!」
「200……」
ここにいる全員の年齢を足しても足りない。
私らからしたら全然若くはないがエルフにとっては200歳はそこまで老けているわけでもないらしい。
「……その、男の経験はあるのか?」
「バカっ! そんな不躾な質問するんじゃないわよ!」
「経験は……まだない、で……」
「恥ずかしいなら答えなくていいわよ! このバカがゴメンね!」
ゴス、ゴスとミリアさんとノエルさんにどつかれていた。ガントルさんがその場でダウンしていた。
デリカシーってもんを学んだほうがいいと思う。
アンズはその後も質問に答えていく。
「エルフってそういう種族なのねぇ……。見たこともないから理想を押し付けすぎてたわ」
「昔は人間さんと一緒にいたみたいですけどねぇ。差別されてたからとかで人間と関わりを絶ってたみたいです」
「差別……」
「人間はそういう生き物ですからね……。傲慢な種族ですー
「あ、でも私は気にしてないよ!? 珍しいって目で見られるのは承知の上だし! 耳触ってみる?」
「触る」
ミリアさんたちはアンズの耳を触っていた。
「感触は人間の耳と同じ感じがするわ……。とんがってるだけの人間の耳って感じかしら」
「ひゃっ、くすぐったっ、あはははははっ!」
「あ、ごめんなさいね……」
「いいんですよー! それより、私、エルフなので魔法得意なんです! ミリアさんは魔法使いですよね? でもなんか変な感じがします」
「変な感じ?」
「ちょっと背中を向けてください。すこしくすぐったいですよ」
そういってアンズはミリアさんの背中に手を入れる。ひゃっ、と可愛い声を出すミリアさん。
アンズはここだと声に出した。
「な、なに!?」
「人間の魔法使いって、魔法に関してはまだまだなんです。なんていうか、変なところに魔力の栓をつけてるんですね。だから魔法の真髄を半分も発揮できてません。少し、痛いですよ」
そういって、アンズさんは右肩あたりに両手をやり、そのまま強く押し込んだ。
ミリアさんは痛っ!と声を出してすぐに。
「……えっ? なんか、すごい魔力の流れが良くなった感じがするわ」
「本当ですか?」
「ちょ、ちょちょっと魔法の試し撃ちしたいわ!」
そういって魔物が出る森へと向かった。
ファイアーボールを唱えた。いつものミリアさんのファイアーボールなら人間の顔サイズのファイアーボールなのだが。
なんかすごい。ただのメラだったのがメラ○ーマになった感じ。
ミリアさんもその威力の向上に目をまん丸くしていた。
「嘘!?」
「魔力栓を外すとこんな威力が出ますよ! ノエルさんも解放します?」
「し、します! ただ、私は回復魔法専門なので効果はあるかわかりませんが……。強くなれるのなら!」
「オッケーです。魔力栓は人によって違うので……。エレキさんたちは周りの魔物を警戒しておいてください。ノエルさん、少しくすぐったいですよ」
「はいっ」
アンズはノエルさんの背中に手を突っ込む。
「うーん、どこだ? わかりづらいところにある気がするなぁー」
「ワクワク」
「あ、ここだ。心臓辺り……。ノエルさん、すごい魔力量ですね。魔力の量だけならエルフに負けてませんよ」
「えっ!?」
「こんだけ魔力を溜め込む器を手に入れるには結構な努力が必要なはずです! すごいですね! ただ、ミリアさんより魔力栓が大きいのか、魔力は4分の1くらいになってますね。魔力栓を取ったらものすごい魔力が身体を駆け巡るはずです!」
「本当ですか!? やったぁ!」
ノエルさん凄いんだ。
「ただ、この大きさだと痛みもバカになりませんよ? 気絶するような痛みがあるかもしれませんが……」
「構いません!」
「わかりました! では、歯を食いしばっててください!」
アンズはノエルさんの左胸あたりに手を当て、勢いよく押し込んだ。
ノエルさんは声にならない叫び声をあげる。
「〜〜〜〜〜っ!」
「これで魔力栓が取られたはずです。二人とも、魔法の真髄をこれで発揮できますね!」
ノエルさんは涙目になりながら立ち上がった。
「ふ、ふふふ、ふふふふふ。力が湧いてきました。ふふふふふ、今の私は無敵です!」
「少し魔物を倒していきましょう!」
二人とも強化されたようでハイになっているようだ。
「そういえばガントルさんボコられて置いてきたままだけど」
「いいの。あんなデリカシーなし男」
「あ、あの方も魔力解放を……」
「しなくていいわ。あいつは魔法使わないし。あまり気安く男にボディタッチしないほうがいいわ。特にあの女好きには」
「ですね」
ガントルさん可哀想だけど普段の行いがな……。




