ばんけんのおしごと!
普段私が過ごすのは与えられている部屋か外かの二択。気分による。風が気持ちいい時は基本外だし、雨とかジメジメしてる時は中。
今回も外でウトウトしていると、馬車が目の前を通った。
「わふ?」
「ああ、起こしてしまったか? これから私は王城に行ってくる。魔物を飼うということで王にも許可をもらわねばならないのだ」
「わふ」
やること多くて大変ですね〜。
まぁ、今の私はペットだし気にしなくてもいいけど。私は大きくあくびをして再び目を閉じると、今度は戦士のガントルが通りがかった。
「わふ?」
「あ、わり、起こしたか? ちょーーっと問題発生してな。ミリアに頼まれても追ってくるなよ?」
「わふ」
と言って走っていく。そして、怒って出て来たのはミリアさん。
「あんの野郎! エレキ、あなたの出番よ! 追うのよあのガントルのバカを!」
「わふ!?」
なんか怒らせることしたんだな……。
ここまでカンカンのミリア。何したっていうんだろう? でも追っかけるのは面倒臭い〜。
私は狸寝入りを決めこんだ。
「ああ、くそ、頼れないわね! あんにゃろうどこ行きやがった!」
言葉遣い悪いですよ。
走ってガントルさんを追いかけるミリアさん。そして、いそいそと出て来たのはノエルさん。
ノエルさんはシスターの服を着てどこかに向かうようだ。
「あら、気持ちよくお昼寝ですか? いいですね〜。私はこれから教会にお祈りに行ってくるので、エレキ、留守番は任せましたよ」
「わふ」
「ふふ。人間の言葉がわかるなんてとても賢いですね〜。帰ったら留守番のご褒美をあげますからね〜」
ノエルさんは聖職者ということもあり誰よりも甘やかしてくれる。
そして、この家には使用人以外は誰もいなくなった。私もゆっくり昼寝……と思っていたが、使用人でもなんでもない匂いがする。この家の使用人の匂いは全て覚えたけど、この匂いの人はいない。
私はおもむろに立ち上がり、その匂いのとこに向かうと。
「ガルッ!」
「な、なんだ!?」
泥棒が侵入していた。
やっぱ泥棒か! 私は吠えると、泥棒は剣を取り出して来た。
「い、犬っころがなんぼのもんだ! まだ使用人は気づいてねぇみたいだし……死ね!」
「ガルッ!」
私は電気を纏う。
その電気に泥棒は思わず怖気付いたようだ。
「な、なんだお前!? ただの犬じゃねえな!?」
「グルルル……」
「ひ、ひいいいい!?」
と、逃げていった。が、通りがかりの使用人はその泥棒を見てラリアットを喰らわせて拘束していた。
「いでででで!」
「誰ですか? なぜこの屋敷に侵入してるのです?」
「た、たた、助け……! 魔物に殺される!」
「魔物………? ああ、エレキですね。エレキが脅したんですか」
「グルルル……」
泥棒、ダメ絶対。
殺しはしないけど脅しならこんな電気でも充分だろう。私は電気を放つのをやめた。
「とりあえず、衛兵に突き出しましょうか。泥棒でしょうし」
「ガル」
「よく見抜きましたエレキ。流石ですね」
「わふ」
どんなもんですかい。番犬の仕事はちゃんとこなしまっせ。