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ワーナガルムたくさん

 日本語で書かれた本を見て、精神が壊れてしまった二人。

 モルドルさんたちがストーリーをほめたたえていたのを見て、私たち三人は思わず目が点になってしまった。

 キースさんにそういうストーリーはどうかと聞いてみると。


「聞いている限りだとつまらんな。最初から最強であることになんの意義がある?」


 一蹴。

 そういう感性だよな。この世界じゃ私たちと価値観が違うのかと思ったぜ。


「それで今度はこっちの本ですか……? もう嫌なんですけど……」

「昨日は悪かった! 読みたくないと思ったのは読まなくていいから! ね、ね? 頼むよぉ~!」

「いいですけど……。じゃあ、この同じ作者のこのオオカミって本読みますね……」


 オオカミ、ねぇ。

 同じ作者だっていうのがものすごく気になる。いや、昨日の作品見てると作者の名前で少し警戒するようになっちゃうね……。

 大地さんは本を開き、文を読み始めた。


「この世界には、狼の魔物、ワーナガルムというものがいる。そのかっこよさに魅せられてしまったので、ワーナガルムの生態を研究してみた。

 ワーナガルムというのは、生まれた場所で持っている属性が違うらしい。毛がなく、肌が岩のようになっていた岩のワーナガルムだったり、水の中で生活しているワーナガルムだったりと多種多様に生息している」


 と、うってかわって割とまじめな内容だった。


「本来、こんなにワーナガルムとは出会えないらしい。僕は持って生まれた幸運のおかげで、ワーナガルムを多数発見することができた。神に感謝している。

 ワーナガルムは、Sランクに分類されている魔物の中でも特段と強く、能力を持っているので転生したい魔物ランキングは堂々の一位。

 ただ、無能力として生まれる、何もない平原だったり山の中だったりすると一気に残念度が増すし、大体のワーナガルムは無能力で生まれる場所で生まれるため、目撃情報も無能力が多いため、無能力には生まれたくない」

「……そういうこと」


 キースさんたちはワーナガルムには私のような能力はないと言っていた。それは無能力になってしまう場所で生まれたからか。

 たしかにノスタルさんと同じようなことを言ってるから、この人、意外と魔物に対してだけは観察眼があるというか……。


「自作小説よりだいぶ読みやすい……」

「痛々しい妄想とかほとんどないですからね。精神的ダメージがないです」

「ほとんど事実陳列だもんな。無能力で生まれなくてよかったね、大神さん」

「ほんとに。無能力で生まれてたら私死んでる」


 私がいま生きているのは雷があるからだ。

 電気というのは本当に強い。強いエネルギーの電気は使い勝手がいい。


「ほう? ワーナガルムというのはそういうものなのか」

「こいつ何の力持ってんだよ」

「雷」


 と、触れてこようとしたサイトゥーさんが、少し電気を放った毛を見て手を引っ込めた。


「ほかにもいろんなワーナガルムの生態について載ってます。この人は、溶岩の中を泳ぐワーナガルム、毒沼を歩くワーナガルム、風に乗って空を飛ぶワーナガルムを見たことあるみたいですね。生まれる場所によって能力が変わるというのはだいぶ厄介な生態だとも言ってます」

「そりゃ雷とか怖えだろ普通に……。雷が多いところで私が生まれたっぽいから雷を操るみたいだし」

「ですね。ただ……この本はワーナガルムはそういう天候を無視して天候を操るということを書いてまして、理に反しているとか書いてます。神の魔物だとか……」

「それはない。確かに私だって雷を落とすことはできるけど……神の魔物ではない」


 そういう性質なのだ。

 私の体毛だって静電気がものすごく起きやすく、その静電気が雷のように強いってだけにしか過ぎないのだ。

 だから神だなんていうものではない。










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