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5W1HのH

 魔物の凶暴化現象が人為的に起こされたというだけでも結構な騒ぎとなった。

 シルクハットの男は貴族であり、ミリオストロー子爵。改革派に属する貴族だ。が、あまり金がないと言われており、ミリオストロー子爵の裏にはやはり誰かがいるらしい。


「あの……。魔物を凶暴化させるつってんのに魔物連れてくのどうかと思うんだけど……」

「どこで開発していたのかが知りたいのだ。匂いを辿れるエレキくんにしか頼めん」

「えぇ……」

「君は効かなかったのだろう? なら大丈夫ではないか」

「それは少量だったからってこともあるかもしれないわけで、開発してるとこはこれよりもっとあるかもしれないんでしょ……」


 騎士団長を背に乗せてクンクンと匂いを嗅いで辿っていく。警察犬かわたしゃ。

 昨日の雨でだいぶ匂いが薄れてる。これは無理だわ。


「無理。雨で匂い消えてる。想定済みだったのかもね。匂いをたどられると。だから雨の日を選んだんだわ。少しの時間だけ嗅がせりゃいいなら大量に持ってってぶちまけりゃいいし」

「そうか……」

「まずはそのミリオストローさんの屋敷を調べてみりゃいいんじゃないの?」

「今部下が調べておりますが、今のところ何も発見できてないようで……。前回の呪いといい、改革派の動きがきな臭くなってきましたな……」

「やっぱこれも改革派?」

「改革派の中でも過激派という派閥ですな……」

「貴族はいろんな派閥があってしがらみもあって大変だねぃ」


 そういう色んな思惑とかに雁字搦めになって大変だね……。

 私は魔物だし、貴族のしがらみとかは……全くと言っていいほど無関係というわけでもないが、魔物なのでそこまで関係はないもんね。ペットですし……。


「貴族も一筋縄ではないのだ……。王族を乗っ取りこの国を支配したい貴族、王族にはこのままずっと健全なる政治を納めて欲しい貴族、平民のために動く貴族や平民から搾取することしか考えてない貴族……。貴族の世界はとても厄介なのだよ。誰も彼もが周りの人のことを思いやり、助け合う……そんな世の中になってほしいと切に願う」

「騎士団長……」

「そんな世の中は来ないのだろうがな。ならばせめても、私だけは騎士道に反せぬよう、まっすぐおらねばな。騎士たるもの、まっすぐでなければならぬ」

「かっこいいっすね」

「カッコつけたからな。魔物である貴殿にしか私の本音など言えぬよ。人間の前だとどうも恥ずかしい」


 だよな。

 騎士団長はとてもまっすぐ。そんな言葉に少し心打たれたのかは知らないが……。私はこの人が困っていたら助けてあげたいなとはちょっと思った。


「しょうがない、匂いを本気で追う」

「無理なのではなかったか?」

「本当に薄れすぎてるけど……なんとか嗅ぎ分けられる程度にはある。見つかるかどうかは運次第」

「運でもいい。探してくれ」

「わかった。ちゃんとこの王都にミリオストロー子爵はいたんだよな?」

「ああ。出てはおらぬ。ミリオストローは領地を持たぬ貴族だ。それに、王都に入る門番もミリオストロー家の馬車は見ておらぬし、声をかけてもおらぬ。貴族でも誰でも一応顔は見せる必要があるから……出たという線は考えづらい」


 なるほど。だがそれだとしても少し疑問は残る。


「じゃあどうやってあの森に来たんだ? あの時、ミリオストロー子爵が出たっていう門番の証言はないでしょ? 誰も見てないまま、あの王都から抜け出せるってことじゃん」

「む、それもそうであるな……」

「となると、匂いを追うってよりかはその道を見つけた方がいいと思う。その道が知られていたらアリバイなんて作り放題だし」


 門番に顔を見せて出て行ったという証言をさせることだって容易になる。

 私とか見慣れてる人たちは割と顔パスで通してくれるほど緩いが、通ったという記録だけは残るようだ。


「私たちの目的はまずその道を見つけることかな。まず馬の目撃証言を冒険者に聞いて回ろう。ここら辺の王都を取り囲む壁に穴がないかとか確認しなければなるまいて」

「そうだな……」


 この世界の王都というのは主要都市ということもあり塀で囲われている。

 だからこそ、入退場した時の記録は残るし、証言にもなる。出入りできる場所があったとしたらその証言の信憑性は一気になくなってしまうな。


「あと一つ気になるんだけど、この王都の塀の外で馬って放牧できる?」

「出来なくもないが……厳しいだろう。王都周辺に棲息する魔物は結構強い。馬などは簡単に殺されるし、放牧するにしても人間が見張っておく必要があるだろう……。フルクトゥスドラゴンのおかげでかなりの数が息を潜めたとはいえど、それでもいるからな……。放置できるというのは考えづらい」


 なるほど。


「お仲間もいそうですね。あの森に来た時、そのミリオストロー子爵は馬に乗ってましたし。まぁ、王都から出てきたのではなく、他の領地から馬に乗ってきたのであれば話は変わりますが、どちらにせよ裏に糸を引く人はいそうです。この計画は一人じゃ無理ですし

「そうだな。ミリオストロー子爵がこの王都から入ってきたというのは一ヶ月ほど前のことだ。出た記録が残っていない。どのように外を出て、馬をどこから調達したのかを調べる必要があるな」


 私は騎士団長と話しつつ、匂いを追っていく。

 すると、やはり王都の壁についた。ここで匂いは途切れているが……。


「……地下か?」

「地下?」

「ここの地面だけ妙に柔らかいし、草が少しおかしくないですか?」

「そう、だな」

「この蓋を壊すと……」


 あらびっくり、地下通路。











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