森の魔物、凶暴化
今日はあいにくの雨模様。
私はいつもの小屋ではなく、フルクトゥスドラゴンの横でお昼寝していた。
「いやぁ、雨風凌げるでかいドラゴンいて助かった」
「僕のこと便利だと思ってるねぇ。友達だからいいけど」
「友達補正強すぎる」
このドラゴン、友達だよって言っとけばなんでもやってくれるのではないだろうか。
すると、近くに雷が落ちる。
その轟音に少しビビってしまった。それをフルクに見られる。
「雷を操るくせに雷苦手なの?」
「いや、急に来たら誰でもビビるでしょ……」
「そういうものなの? 当たっても少しビリビリする程度じゃない?」
「いや、音がいきなり来るのビビるわ」
ドォン!という爆音はいきなり来られるとビビるわ。
「最近のどかだねぇ〜」
「フルクのおかげで魔物がほとんど近寄って来ないし」
「僕超強いドラゴンだもんねぇ〜」
ドラゴンの威圧がすごく、ここら辺では魔物被害があった話は聞かない。
と、フルクは顔を上げ、なにやら周囲を見渡していた。なんか来ると言ってそっちの方を見ている。
たしかに森の木々の匂いとはまた違う匂いがしている。嗅いだことのない匂い。
「なんか……この匂い変だね。なんか混じってる?」
「なんか森の方が騒がしくなってんな」
私は森の方を見ると、隠れていた魔物が突然飛び出し、暴れ出していた。
すると、目の前には馬に乗った男が現れる。シルクハットを被った髭面の男性。
「これは僥倖。Sランクモンスターのワーナガルムまでいるではありませんか! さぁ、二匹ともこの匂いを嗅ぐのです!」
「
と、目の前に薬品がぶち撒けられる。
香ってくるのは花というか、なんというか心地良い匂い。トイレの香り付き消臭剤みたいな。
こんな匂いがどうしたんだろうか。
「なにこれ」
「魔物を凶暴化させる薬じゃない? 人間、そういうのよく開発するから。自分より格上には効かないみたいだけど」
「ふぅん。なんか変なの」
「さぁ、暴れだせ! 王国に滅びを!」
なにこいつ。私が凶暴化してると思い込んでるのか、手を広げ私たちを見ていた。
私はため息をついて、フルクに少し演技しようぜと小声で伝える。フルクは面白そうだとか言って乗っかった。
「っと、ここにいては私も危ないな。早く逃げるのだ」
「ガルルガァ!!」
私はまず馬を殺した。
馬さんごめんね。あとで食べてはあげるから。馬が丸焦げになり、シルクハットの男性が地面に投げ出される。
自分が狙われるのは予想外だったのか、ひぃ!?と叫び声をあげていた。
「ガルルルルル……」
「わ、私はお前たちの敵ではない! 仲間だ! に、憎き人間どもを殺すチャンスだぞ!」
「ガルルガァ!」
私は雷をその男の前に落としてやった。
男は、ヘナヘナと倒れ気絶。小便をちびっていた。
「漏らした」
「ぷっ……」
「とりあえず、王都の騎士団に運んでってやるか〜」
「じゃ、僕は暴れ出した魔物を殺しとくね」
「うん、よろしく」
私は男を口で咥え、引きずって王都の騎士団の詰め所に向かう。
騎士団長にこの男を手放し、森で魔物を凶暴化させてたとチクった。騎士団が確かめに行こうとしたが、フルクトゥスドラゴンが暴れてる魔物全員ぶっ殺してる最中だから近寄らない方がいいとだけ言っておいた。
せっかくのどかな日だったのに雨の中こんな仕事させてんじゃないっての。




