電気とはいったいなにか
結局のところ車は買わなかった。
誰も運転ができないから。高校生で車の免許を持ってるやつはいない。ただ、委員長が普通二輪小型限定免許だけは取っているらしい。バイトの通勤であったら便利だからということでとってたみたい。委員長はさっそくスクーターを購入していた。
ちょっと古びたスクーターが庭に現れる。
「なんだこの車は……」
「ちょっと試運転しますね」
そういって、委員長はエンジンをかけた。
エンジンの音にキースさんはびっくりしている。
「うおっ、なんだ!?」
「エンジンの音です。ここを握って捻れば……」
スクーターは動き出した。
その様子にキースさんは目が点になっていた。この世界の移動手段は馬車であり、馬が必須。なのに馬がいなくとも勝手に動き出すスクーターに驚いているようだ。
キースさんは驚いて何も言わずにいた。
「私のほうが速いですけど、あれもいいでしょ? 車は運転できないからあっちにしたんですけど」
「でも十分だろう……。なんだこの馬車は……。何で動いてるんだ!?」
「ガソリンっていうものですよ。なんか入ってるみたいですけど。さすがにガソリンはネットで買えないし燃料尽きたらそこまでって感じで便利じゃないですけどね」
「スマホの充電尽きないんならそのスクーターの燃料も尽きないのでは?」
「そうともいかないんだ。ノートパソコンも買ったんだけど充電はきちんと消費されるんだよね。モバイルバッテリー買って電池も買ったからそっちには困らないけど……。さすがに電動でも電池じゃ間に合わないからあまりコスパがいいとはいえないんだよね」
「……電動ならそういう仕組みを作れば私で充電できるんじゃないの?」
「あ、そっか。雷使えるんだもんね。電力ならそっちで間に合う……わけないじゃん。雷の力強すぎるから利用できないよ。ネットで買える設備だと」
「そっかぁ」
電気ならたくさん供給できるんだけどなぁ。
「電動……? 電気で物が動くということか?」
「そうですよ?」
「電気とはそういうことができる、のか?」
「できますね。むしろ僕たちがいた世界ではそっちのほうが主流です。自動で開くドアだったりも電気で動かすくらいには」
「……電気はそちらの世界では欠かせないエネルギーなのだな」
「はい」
「ならこっちもその電気とやらを作って活用してみたいが……どうやって起こすのだ?」
「そりゃ水力とか火力とかなんだけど」
「電気の仕組みを知らない僕たちがやってもね……」
私たちにとって電気というのはそういうのがあるってだけしか知らん。
水力発電でなぜタービンを回して発電できるのかとか、電気そのものってまずはどういうものなんだとか。
そういうのはあまり知らないんだよなぁ。
「難しいか」
「ですね。あまり現実的ではないですし、こちらには魔法なんてものがありますし」
「そうか……」
電気というのはいったい何なんだろうな、と私の体をみて思う今日この頃。




