頼りになりすぎるボディーガード
王都近くにフルクトゥスドラゴンが住み着いた。
王都の人たちは少し恐怖を感じていたが次第に慣れていったようだ。人間は弱いが適応力は割とある方だから慣れるんだな……。
「王都近郊の討伐依頼がないな……」
「そりゃ近くにあのドラゴンが棲みついてるからな。魔物は近寄ってこんよ」
「だから討伐依頼は遠くまで行かんとねえ」
キースさんが依頼が貼られている掲示板を見て崩れ落ちていた。
久しぶりに冒険者稼業が出来ると意気込んで、ギルドにやって来たはいいものの、王都付近で魔物の姿はめっきり確認できなくなった。
ドラゴンのオーラが、魔物を近づけなくさせているようだ。いたとしても、バカな魔物なのですぐに誰かにやっつけられて依頼が貼り出されない。
「ならさ、フルクトゥスドラゴンのところにいかない? 面白いことあるよ」
「面白いこと?」
私は四人を背に乗せてフルクトゥスドラゴンのところに向かう。
ドラゴンは綺麗な泉の湖畔で欠伸をしていた。
「よっ、フルク」
「エレキ〜、ようこそ〜」
「でか……」
「こんなでけえの……?」
「勝てないわよこんなん」
と、キースさんたちは初めて見るフルクトゥスドラゴンに驚いていた。
私はフルクトゥスドラゴンのフルクにあるお願いをすることにした。
「フルク〜、私たちを背中に乗せて飛ぶことできる?」
「出来るよ〜ん。飛んでみる?」
「いいの? ダメ元でお願いしたんだけど」
「飛ぶくらいならいいよ! 友達のお願いだし! ほらほら、背中に乗って」
というので、私は四人にドラゴンの背に乗ってと告げた。
「エレキ、ドラゴンと話せるんだな」
「なんか言語能力っていう能力が私にあるみたい。ほらほら、乗った乗った」
四人は背中に乗った。
私も背中に乗り、鱗に捕まる。
「じゃ、飛ぶよ〜! 落とされないようにね!」
「おっけー!」
フルクは大きく翼を広げた。
そして、翼が動く。どんどん、フルクの体が大地を離れていった。
「わわっ、なに!?」
「飛ぶのかよ!?」
「そう! 空の旅を楽しもうよ!」
フルクは空を大きく飛び上がる。
雲の近くまで上がって来た。王都も見渡せるくらい高く飛び上がった。
すごい。王都をまるまる一望できるなんて滅多にないぞ。
「た、高ぁ〜……。地面が遠いわ!?」
「く、空気が少し薄い気がしますね……。それにしてもこのフルクトゥスドラゴンの背は広い……」
「すご……」
「いいな……。空を飛んでいる……。素晴らしい……」
「キースさん、最近忙しいからこういう刺激欲しかったでしょ?」
「ああ……! 感謝するぞエレキ……!」
キースさんは高いところから見る景色に少し感動していた。
この世界には飛行機なんてものはなく、スカイツリーなどのような高い建物もない。だからこういうふうにものすごく高い場所から見下ろすことなんてないのだ。
「あ、あの雲はヤバいかも。迂回〜」
と、迂回する。
あれは積乱雲だ。雷も起きやすく、私はなんともないが、他の四人は人間だから雷が落ちたらひとたまりもない。
「前から魔物が来てるぞ!」
「ここで戦えるかよ」
「魔物? ああ、僕に任せて」
そういうので、私はフルクに任せようと言うと、フルクは口を開き、ものすごい水圧のブレスを吐いた。
水のブレスは前に飛んでいた魔物の鳥を貫き、馬鹿でかい風穴を開けていた。
「ワァ……」
「フルクトゥスドラゴンやべぇ……」
「魔物にあんな風穴開くことある!? むしろ残ってる肉片を見る方が早いくらいには結構削られたわよ!?」
「やはり、天災ですね……。エレキの友人でよかったです」
フルクトゥスドラゴンのブレスってこんなヤバいの?
貫くというより消滅させるというか、潰すというのが正しいのか。
「えへへ。どう? 僕強いでしょ?」
「強すぎんだろ……」
「この空で魔物に怯えることはないよ! 空では戦えないでしょ? 僕が戦ってあげる。僕はエレキの友人だから、君が住む王国は僕が守ってあげる」
「頼もしいボディーガードだね……」
相手にするのは嫌だな。




