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ドラゴンさんは友達がいない

 王都近郊にフルクトゥスドラゴンが目撃され、今冒険者ギルドの冒険者が動向を窺っているようだった。

 ドラゴン。ドラゴンか。倒せば心臓手に入るかな? いや、でもドラゴンだろ? 倒せるとは限らんし……。それに、その口ぶりからして恐ろしいドラゴンっぽいし。


「ルビーさん、フルクトゥスドラゴンってなんですか?」

「フルクトゥスドラゴン。太古の昔から存在している神のようなドラゴンです。水を操るとされ、何百年か前にはとある王国がそのドラゴンのせいで一夜にして滅びたそうです」

「うわぁ、聞くだけでやばいやつじゃん……」

「とりあえず避難を優先させるのだ! 場合によっては国を捨てて逃げなければならぬ!」


 バリー王子は指示を出し、ただちに平民たちにも知らせるように命じた。

 私も逃げなくちゃ……と思うが、私だって戦える。勝てないとはいえど、戦わなくちゃダメじゃないか? 人間に戻るならどうせドラゴンの心臓が必要になるし……。

 それに、キースさんは逃げるかもしれないが、ガントルさんたちは行くだろう。そういう人たちだ。


「私も行かなきゃ」


 私は窓を突き破って外に出る。

 そして、急いでフルクトゥスドラゴンのところに向かう。異質なつわものの匂い。冒険者たちは装備をしっかりして、そのまま王都近郊にあるフレベイゼンの泉付近に集まっていた。

 フレベイゼンの泉という場所を見てみると、たしかに私より10倍もでかいドラゴンが鎮座している。ふああ、と大きく欠伸をしていた。


「んあ……雷?」

「気づかれた」

「おー、雷の器官をもつワーナガルムだぁー!」


 と、そのドラゴンは私を見てそういった声を出す。

 私は臨戦態勢をとる。死にたくはないけど、戦って倒さないと私は人間に戻れないから……。だが、そのフルクトゥスドラゴンは私を隠したと思っているのか、戦う構えを一切取らない。それどころか、近づいてきてよと声を上げてきた。


「……あれ、警戒されてる?」

「……」

「やだなー。襲ったりしないよ? 僕は温厚だから……こんななりじゃ仕方ないか! ほらほら、かっかしててもいいことないよ?」


 と、竜がしゃべりかけてくる。

 私はふと気づいた。


「……あれ、なんで私このドラゴンの言葉がわかるんだ?」

「そりゃ君には言語能力っていう能力があるっぽいから僕と話せるんだよ」

「……えっ」


 初めて明かされた能力。言語能力というもの。


「珍しいワーナガルムだねぃ。女の子だ。一緒! 可愛いー!」

「……可愛い?」

「うん! ねぇねぇ、ワーナガルムさん。よかったら僕とお友達にならない?」

「……はぁ?」


 なんかとんでもないことを言い出した。


「僕長年一人ぼっちでさ……。さみしいんだよ。ああ、もちろん拒否してくれてもかまわないよ? 君がこの国が好きなら僕はこの国を絶対滅ぼさないし……。っていうか、僕は滅ぼしたくないし……。そ、そそ、その、僕とお友達になってください」

「……えっと?」

「そ、そうだよね。こんな突然僕みたいなのがやってきてお友達になってくれって言われても困るよね……」

「いや、いやだとは言ってないけど……」

「じゃあ、いい……?」

「……まぁ、いいけど」


 なんだこのドラゴンは。

 









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