死ぬよりまし
男の人たちについていくと街のようなものが見えてきた。
四人組の一人の女の人が私の背に乗る。電撃放ってないだろうか? びりびりしてない? 大丈夫? そういう心配をしながら門の前に立つと、門番さんが男の人に話しかけている。
「なんだその狼。行くとき連れてなかったよな?」
「あー、途中で懐いちまって。ワーナガルムなんだけどよ」
「ワーナガルム……? にしては少し変じゃないか?」
「ワーナガルムの変異種だ。一応、ギルドマスターに報告しておこうと思ってな」
「……そうか。だが、その狼は危険だ。通すわけにはいかん」
「やっぱり?」
男の人が近づいてきて私の頭をなでる。
そして「王都の中には入れてやることできないわ。ごめんな。少しここで待っていてくれ」と告げられて、四人は門の中に入っていった。
私は言われた通り、そこに座り、あくびをしながら自分の体を少し調べてみる。というか、私の毛、ものすごく静電気も起こりやすいみたいで、触ったら少しびりっとした。そして、毛が逆立っている。結構強い静電気だ。
もしかして私って電気を操ることができるんだろうか。自分のことなのにまるで分からない。
「……可愛い、な」
「わふ?」
「これで魔物なんだもんなぁ……。ワーナガルムの幼体……。成体になったらもっとでかくなるんだろうけど、これでも十分デカい……」
「わふ」
「ワーナガルムは警戒心が強い魔物のはずなのにこの無警戒さも実に子供だ……」
「……」
そこまで警戒心がないだろうか。
門番さんに愛でられていると王都の門から再び誰かが出てきた。さっきの四人組と一人の老齢の男性だった。
老齢の男性は、見た目こそ白髭とかも生えているがものすごく強そうだ。ムキムキだし。
「ほほう! これがワーナガルム変異種! 雷を操るのを見たと!」
「あまり乱暴にしないでくださいね。うちらのペットにするんですから」
「ワーナガルムをペットってな……。こいつは警戒心が強い魔物だぞ。いくら幼体といえど……」
と、私のお腹付近をなでてくる。
あ、そこ気持ちいい。もっと撫でてっ! もっと撫でるのだ!
「……警戒心が強い魔物?」
「ね? 人懐っこいでしょ?」
「ワーナガルムにしては人間に攻撃しないし無警戒だ。だが、姿はワーナガルムだ。もどきか……? いや、だが、強さの片鱗はある。この毛、電気をため込む性質を持っているな。ワーナガルムには絶対にない性質」
そうなの?
「新種、だな」
「新種」
「目撃例もこの子だけだ。レア度だけで言うのならSランクは行くだろう。強さは知らないが……」
「咆哮すると雷を呼び起こして雷の力を得ますよ。雷を飛ばしてきます。正直それで死にかけました」
「なるほど。自然の驚異を味方につけているのか……。それはさすがにSにしても問題はないだろう。ペットにするとかいったな? ちゃんと人間の敵にならないようしつけられるのか?」
「します! 大丈夫だよな、お前も」
「わふ」
従順でいるのだ。そしたら殺されることはない。
……人間だったころの尊厳はもう破壊されている気がしなくもないが。死ぬよりまし。そう思っておこう。死ぬよりまし。
「よし、じゃ、連れてきてもいいぞ。と、うおっ! びりっとした! 静電気か!」
「わふ」
「攻撃する意思はなさそうだ。もともとこの毛は静電気が起きやすいみたいだな。触るときは気をつけろよ。水にぬれた手で触ったら感電するかもしれんぞ」
「うっす」