今私の信仰してる神のことなんつった!
人間に戻って一日が経過した。
私たちはとりあえず王都に戻ることになった。本来はシルルさんたちの旅行であり、私たちがそこまで長居するのも失礼だったし。
私は初めて馬車に乗り、王都までやってきた。
「ただま~!」
「おかえりなさいま……せ?」
「困惑するだろうな……」
私は元気よく挨拶をしたが執事さんは困惑しているようだ。
「旦那様、エレキはどうしたのですか?」
「……ここにいる」
「ここ……?」
「私でーす。エレキね、エレキ。前世の姿に戻ってんだ~」
「……この私、いかなることが起きようとも驚かない自信がありましたが」
「だろうな……。狼が人間になってるもんな」
ありえないことが起きているからか、執事さんは驚いて固まっていた。
とりあえず昼近いので食事にしようというと、食堂のほうからなにか声のようなものが聞こえてくる。
ガントルさんたちが食べているんだな、けど王子の声も聞こえるのは不思議だ。
「バリー。なぜいる」
「お邪魔してるぞ。君がいないうちに君の仲間から君のことを聞こうと思って……と、そちらの女性は初めましてだな。私はこの国の王子、バリー・シャンヴァーラ。よろしく頼む」
「相変わらずくさい」
狼から人間に戻っても鼻のよさは据え置きのようで、ちょっと臭い。
が、声に出してしまったようで王子は少し不機嫌そうな顔でこちらを見る。失礼なこと言いました。申し訳ありません。
「初対面で臭いとは……」
「おうおう、キース、そいつ仲間にすんのか?」
「かわいらしい子ねぇ。お名前は?」
「なんか知っている雰囲気を醸し出してますが……。私と以前どこかでお会いいたしました?」
やっぱ私のことは気づかないよな。
私は改めて自己紹介することにした。
「お久しぶりです、エレキっていいます」
「エレキ! うちのペットと同じ名前だな!」
「エレキ? いや、その話ぶり……。お前ワーナガルムのエレキか!」
王子がそういうと、みんな驚いてこちらを見る。
「そうでーす。前世の泉にダイブしたらこうなりましたぁ~」
「うっそだろおい」
「エレキの前世ってこと?」
「不思議なこともあるものですね……。前世の姿はあの異界の二人にどことなく似てます」
「ああ、私もその世界出身だから」
そういうと四人全員固まった。
「つまり、君は異界から死んで転生してワーナガルムになっていたということか?」
「そういうことです。私自身、前世の記憶バリバリあるんで……」
「誰かに連れてこられたとかそういうわけではなく?」
「あの二人を連れてきた集団の一人と刺し違えて」
「詳しくは俺から話す。とりあえず食事にしよう」
というので、私たちは席に座ると待っていたかのように料理が運ばれてきたのだった。
ナイフとフォークは久しぶりに持つな。マナーとかなっていないと思うけど、そこはご了承願いたいものだ。
私は運ばれてきた料理を口に運ぶ。うまい。でも私のほうがもっと料理旨い。多分。
「シャンバラ様曰く、この姿は三日間だけしか持たないって。あと一日しか持たないっていってた」
「シャンバラ様に出会ったのですか!?」
「そういえばノエルはシャンバラ教徒だったな」
「羨ましいです! シャンバラ様はどうでした? お優しかったでしょう?」
「お優しいというか、手違いで魔物に転生させたのを申し訳なくしていたというか」
「へぇ! あとで詳しい話を……エレキに戻った時でもよいので! まさかシャンバラ様のご尊顔を眺めてこられるとは! いい旅をしてきたのですね」
「どうだ? 可愛かったか?」
ガントルさんがそう聞いてくると、ノエルさんは無言でガントルさんにナイフを投げていた。
「あっぶな! なにすんだよ!」
「女神様は可愛いとか可愛くないとかそういう基準で見てるのがむかつくんですよ。シャンバラ様を冒涜するのはこの私が許しませんよ?」
「ひっ……」
「いい機会です。あなたの女性関係について少しばかり説教いたしましょう。たっぷり、こってり絞ってあげますね」
「あ、ああ! 俺ヨウジヲオモイダシタナー」
「大丈夫です。あなたの用事なんて大したことありませんから。ね?」
「き、キース助けてくれ!」
「……俺もお前は一度絞られたほうがいいと思う」
「神はいないのか!」
「いますよ? 先ほどであったとおっしゃられたでしょう?」
完全にノエルさんがぶち切れモードだ。神を冒涜するとスイッチが入るみたい。こわ。怒らせないようにしよう。
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