シャンバラ様
私たちは前世の泉があるというバラード辺境伯のところに来た。
キースさんは先にバラード辺境伯のところで挨拶を済ませるようで、私はキースさんを背に乗せてバラード辺境伯の屋敷に向かい挨拶を済ませる。
そして、再びシルルさんの故郷のナカンペ村にやって来たのだった。
「あらまぁ、うちの娘がお貴族様とお友達に!? ありがたやありがたや……」
「う、うちの娘が何か粗相をしでかしたりしてませんか!?」
「してないといえば嘘になりますわね?」
「うっ」
「でも……可愛げがあってよろしいですわ。それより……都市伝説をご存知で?」
「都市伝説……。前世の泉ですか?」
村人も知ってるようだ。
「前世の姿が映り込むと言われる……」
「前世の姿に似た生物に変えられるんじゃなかったか?」
「一日だけ前世に戻れるんじゃなかった?」
どうやら前世の泉は人によって認識が違うようだ。
どれが本当なのかはわからないが、でも前世に関連するものなのだとは認識できている様子。
委員長と大地さんもついてきて、前世という単語にひっかかり私をみる。
「一日だけもしかしたら人間に戻れるかもですね!」
「だといいがな……」
「こういう都市伝説はまやかしやしちゃダメってのが多いからな……。あくまで都市伝説だ」
「でも、飛び込んでみるよ」
泉に入れば少しだけ元に戻るかもしれん。
私たちはその前世の泉を見に行くことになった。場所はシルルさんが知っているようで、こっち!と案内してくれる。
森の中を歩いていくと、透き通るような水が湧き出ている場所があった。
「ここが前世の泉です! みなさんの前世は何ですかね?」
「私は……って、水面に何も映らないわ。前世がないってことですの?」
「だから都市伝説って言っただろ? 俺も映んねえし手をつけても変わんねえ」
「ダイブしたらいいんですよっ! まぁ、全身浸かっても私は成功しませんでしたが」
「ダイブね……」
私は思い切り水に飛び込んでみる。
冷たい。冷たくて少し意識を失いそうだ。私は水が目に入って痛くなってきた。私は目を閉じ、そのまま沈んでいく。
すると、突然浮力感はなくなり、水に沈んでいる感覚もなくなっていた。
目を開けると、女性が立っていた。
「失礼……元人の子よ……」
「……誰っすか?」
「私は女神シャンバラ……。シャンバラ教が信仰する神といえばわかるでしょうか……」
「あー、はい」
女神様が私に何のようだろう。
「転生させるにあたり……人間の姿ではなく申し訳ありません……」
「……それを言いに来ただけなんすか!?」
「いえ……人間に戻るチャンスというか、人間のまま固定されるようにできることをお教えしたくて……」
「まじすか!?」
人間のまま固定……?
と、私はいつの間にか自分が人間になっていることに気づいた。女神様は鏡を手渡してくると、そこには前世の自分の可愛い可愛いご尊顔があった。
「いやー、人間になれるんなら早く言ってくださいよぉ〜。私戻りたいっす」
「それが……その、必要なものがあり……」
「必要なもの?」
「ドラゴンの心臓が……」
「嘘でしょ」
ドラゴンってあのドラゴンだろ。無理だろ。
なにそんな無茶な要求してんだ!
「私の力では三日間固定するのがやっとです……。ドラゴンの心臓を手に入れて、心臓を持ったまま泉に飛び込んだら戻せます……」
「……いつ戻れるのかなぁ」
「Aランク以上のドラゴンなら何でもよろしいので……」
とはいっても。
ドラゴンは全員Sランクですとかあり得るだろ。
「申し訳ありません、こちらの不手際のせいでこんなことになり……」
「あ、いえ、誰にもミスはありますから……」
とりあえず、私の目標はドラコワンの心臓を手に入れること、かな。




