怒りの頂点ってやつだぜ
イグニスは火を纏い、ノスタルさんを探そうとしていた。
同族が殺されていること、こいつの地雷がそれだったとは……。同族が好きなんだろうなとは思うが、気にしていてもしょうがないだろうに!
イグニスは口を大きく開け、炎のブレスを吐いてくる。私は雷を飛ばして相殺したのだった。
「畜生、気絶させるしかないか!」
寝ぼけてる頭で戦わせるんじゃないっての!
イグニスは炎を吐きながら近づいてきたかと思うと、その溶岩のような爪でひっかいてきた。躱し型、私の前足部分にあたり、その部分から火が出てきた。私はその熱さに思わず顔をしかめる。
「やりやがったなこんにゃろう……」
「ガルゥガァ!」
「大人しくしろってんだ!」
私は熱さを少し我慢して、首元を噛みつかれる。近づけた。私は爪をぶっ刺して、感電させた。びりびりと感電し、イグニスはそのままふらふらーと倒れた。
死ぬような電機は流してないから死んでないと思うけど……。それでも結構効いたはずだ。私は嚙みつかれた痛さと、燃えている熱さでまいりそうだ。
「ったく、手間かけさせないでよ……」
私はそのまま、意識を手放したのだった。
このまま失血死とかするのかな。また死ぬのかな……。と思っているとすぐに目が覚めた。私は噛みつかれた傷とか見てみると、血が出ていない。
回復魔法を使われたとかそういうわけではなく、幸か不幸か、こいつが火を扱うおかげで傷口が焼きふさがれている。
「エレキ!」
「イグニス!」
「無事沈静化……。結構な電気流したからしばらく目を覚まさないと思うけど死にはしてないと思う……たぶん」
「そ、そう、か」
第一王子は胸元辺りに耳を傾けて心音を確認していた。
「あっちぃ~……。毛が焦げて傷口が焼きふさがれた……」
「……止めてくれてありがとう、エレキ」
「いや……仮にもあなたは偉い人ですし、さすがに殺されたら国際問題とかになると思って……」
「この場合は私が使役してるイグニスに殺されたことになるだろうから関係ない」
「むしろこの国で騒ぎを起こすなどと私がそちらの王に文句を言いに行くくらいさ。まだこの研究施設内で決着がついたからよかったものを……。はぁ……。エレキ、とりあえずはよくやった。第一王子殿……。この件は少々こちらとしても問題視するしかありません。私やキースだけならいいとはいえど、ほかの職員の方にもみられておりますし、研究施設が少し破壊されております」
「……わかっている。こちらが賠償しよう。すまなかった」
「いえ。いいんですよ。その代わり……もうそのワーナガルムには二度と仲間の死体を見せないで上げてください」
「そうさせてもらう」
そういって、王子はとぼとぼと帰ろうとしていると。
「ワーナガルムというのはもしかしてある種の怒りを抱えると我を忘れる種族なのでは!?」
と呑気に語るノスタルさんがいた。
「エレキってそういう怒りを覚えることはあるのか?」
「私? 私が怒るとしたら……。唐揚げにレモンを勝手にかけられたり、きのこの山を馬鹿にされたり、大判焼きをおやきとか今川焼とか言われたりするときぐらいかな?」
「から、あげ? きのこの山? 大判焼き……?」
「全部この世界にはないものですけど」




