パラダイスモンキーの群れ
ノエルさんが言うには、魔物には回復魔法は効かないと言う話だった。
私は垂れ流れてる血のところを包帯で止血してもらい、馬車を引く。今日のことをキースさんに報告するらしい。
「ゴブリンキングが指揮をとっていたのは分かるが……ゴブリンキングなんてそうそう出るもんじゃねぇだろ。たしかにAランクに分類されてる魔物だから強いには強いが……」
「そういえば……ノーダル侯爵領で活動してる冒険者の知り合いがこの前とてつもないスライムの大群に襲われたんだって」
「クリューゲル伯爵領では大量のオークに襲われたらしいです。指揮をとっていたリーダーがキングオークだったとか……」
「各地で起きてんのか? なんかおかしくね? そう頻繁に魔物の大群が出るもんか?」
どうやらゴブリンの大群のようなことが各地でも起きているらしい。
話しているとキースさんの屋敷につき、キースさんに報告すると、王都付近でも起きていたことに驚いていた。
「実は私の領でもコボルトの大群が発生していたようでな。なんとか冒険者たちが総力を尽くして追い払ったらしいが……。キングコボルトはうち取れなかったと報告されているし、キングコボルトを捜索しようと思ってたが……」
「こういうこと、この国の各地で起きてますね」
「些か妙だ……。裏で誰かが指揮をとってるかのように見える。まだ低ランク帯の魔物だからいいが……ワーナガルムのようなSランクの魔物の大群が来たらマズいぞ。ワーナガルムはとてつもなく強いんだ。勝てるわけがない」
「まぁ……そう簡単に来ねえだろ」
フラグを立てるな。
「しょうがない。このことは王に報告しよう。さすがに一箇所だけならまだしもこんな周期で複数箇所に発生するなんて妙だ。あー、クソ! やることが多すぎる! なぜここ最近やることがどんどんやってくるんだ! 冒険にすらまるで行けていないッ!」
キースさんは少し疲れ気味のようだ。
私は大変だな……と思っていると、なんだかどこからか呼ばれているような気がした。
あっち……。私は外に出てその場所に向かって行くと、そこは私が最初にいた地点だった。
「誰か呼んでんのか?」
『来たぞ! 我が救世主!』
『救世主〜!』
「あん?」
と、背後を振り返ると猿のような魔物がたくさん立っている。それはまるでゴブリンの大群の時のような数だ。
「……まさか」
『ついにこの時が来たのですぞっ! あなたのような強者が我らの頭になってくれれば人間どもを滅ぼせるっ!』
『うきーーー!』
『さぁ、まずはキングを指名してくださいな! もちろんキングはこの私でしょう!? 指名してくれればあなたさまの望むままに……』
ああ、なるほど。
同時に起きているのは全くの偶然だ。Sランクの魔物が裏でキングを指名したのだ。すぐに理解した。
これ私指名したら襲うパターンだよね?
「いや……人間に恨みないし人間の仲間だし襲うつもりなら指名しないけど」
『なっ……』
『人間の仲間……? 嘘ですよね? あなた様のような人が……』
「嘘じゃないけど」
『なんと……』
と、猿たちはワナワナと震え出す。
『なんと心優しい! 弱者の人間の味方をするとは! この私、感動してしまいました! では、あなた様が人間の味方ならばこの私どもも味方いたしましょう!』
「味方してくれんの?」
『あなた様のご意志のままに! キングを指名してください! 我らが人間を守ります!』
「あーなら、お前でいいよ面倒くさい……」
『おほぉ〜! 進化の音ォ〜!!』
と、猿の一匹が進化し、オランウータンになる。猿か? 猿か。
「裏切ったら殺すからな。人間の味方するんだったら成果を見せろ」
『わかりました! では、とりあえず新たなコボルトの群れを屠って参ります!』
「おう。期待してるぞ」
そういって猿の大群が向かっていった。
後日。
「再び現れたコボルトの群れがパラダイスモンキーの群れに襲われて壊滅したと……。なぜか知らないがパラダイスモンキーは人間の味方して人間を見るとにっこり微笑んで去っていったらしい」
「ふーん……」
マジにやりやがった。
とりあえず説明しておこう。




