彼らがみた光景
前世が人間だと知られたことで少しキースさんとのやりとりにギクシャクこそはしたが、次第に慣れていった。
まぁ、今は狼だしな。
こちらの世界に来た二人も順調に言葉を覚えて来てるらしい。カタコトの時があるがその時はこちらの世界の言葉で話してるのだろう。
強制的に翻訳されるから覚えてるかどうかわからねー……。私としては楽なんだけど、日本語に置き換えるのを手伝うのは辛い。
で、予想外だったのが。
「キース様、なんの言語を話してらっしゃるので……?」
「ニホンゴだよ。彼らに教えてもらった。こりゃ秘密の会話する時にいいな。彼らとエレキ以外この言語知らないしな」
キースさんがたった一週間で日本語をマスターした。天才か?と思ったが、父である前モルガド伯爵は言語学を研究していたらしく言語は得意らしい。
兄も言語学を嗜み、研究一筋だという。そりゃ言語学が身近にある分覚えるの早えわ……。
「キース〜、エレキ借りてってもいーい?」
「いいぞ」
「やった! 最近エレキと狩りにいってないから行きたかったのよね! エレキ〜、行くわよ〜!」
「おっけー」
私は魔法使いのミリアさんと一緒に魔物討伐に行くことになった。
ミリアさんは道中であの二人のことを聞いてくる。一応キースさんから詳しいことは話すなと緘口令を受けているので、異界からの勇者ってことにしておいた。プレッシャー与えてごめんね。勇者ってことで頑張ってね。
「勇者……素晴らしい響き……。はるか昔、異界から来た勇者がこの世界を救ったという逸話がシャンバラ教の古い文献にもありました……」
「異界から来た勇者ねぇ……。強そうには見えねーな。ヒョロガリだし」
「魔法がとてつもないとかそういうのじゃない? 魔法使いなら私は相手してみたいわね」
異世界には魔法なんてオカルトじみたものは無いけど。
「異界か。どんなもんなんだろうな」
「戦争ばっか起きてたりして」
「いや、魔法がない世界かもしれねぇぜ?」
「それはありえません……。魔法がない世界は一体何があるというのですか……」
科学技術。
だがしかし……。魔法はこの世界にとってもっとも身近な技術であり、生活の一部になってるわけだ。
だけら電動で動く機械なんてないし、全ての動力が魔力のせいで産業革命も見受けられない。魔法自体がエネルギーだし革命起こる必要もないのかもしれないね。
「魔法がない世界か……。原始時代かしら」
「魔法がないとすぐ人間は絶滅します……。人間如きの力では魔物に敵いません……」
「魔法がない世界で人間が生きるんだったら、その世界には魔物なんていねーのかもしれねえな!」
ガントル鋭いとこばっかつくなおい。
「でさ、こういう馬車もねぇんだよ! 生き物がいねーから馬車もいねえ!」
「……生き物がいないのなら人間もいないのでは?」
「それもそうだ!」
「バカねー。魔物なんているに決まってるじゃない」
「ですね。彼らに魔物とはどう向き合って来たのか、いつか聞いてみたいものです」
三人は異界とはどんなものなのかわからないから想像を膨らませるしかない。
私は知ってるからこそ……あまり反応しづらい。こちらのことをあちらが知ればあっちの世界が興奮するし、彼らもあっちの世界を知ったら驚くだろうな……。
科学技術なんてこの世界にほとんどないし。あるとしても料理くらいだ。
「さて、そろそろ目的地だぜ? エレキもそろそろ敵の匂いを感じてるだろ?」
「うん」
三人が私が引いてる馬車(馬もそろそろ私を怖がるようになってきたから私が引くことになった)から降りてくる。
敵の匂いはする。が、少し様子が変だ。
「なんか数多い気がする」
「ホフゴブリン10体だろ? そりゃ多いだろ」
「いや……ゴブリンが何1000体もいるような……」
と、言った瞬間、見えて来た光景は。
「嘘……」
「なんだこの数……」
「ホフゴブリンの軍隊、です、ね?」
ものすごい数のホフゴブリンが武器を持って進軍している光景だった。




