前世のこと
委員長と大地さんはとりあえずキースさんの屋敷で保護することになった。
私も眠り、翌日。私はキースさんに二人を呼んで来てくれと言われたので二人を呼び寄せる。
キースさんの書斎に案内された。
「あれから一晩……。色々考えてみた。エレキのこと。人間っぽいと言われていて、異界の言語も理解できている……となると、にわかには信じがたいが……ノスタルが言うように、もしかしてエレキは……」
「……」
「な、なんの話ですか?」
「さ、さぁ? 言葉わからないし……」
キースさんの言いたいことは理解した。
「エレキ、お前元々人間だった、のか?」
「そう。異世界で元々人間だった」
「……やはりか。それしか説明がつかん! なぜ今魔物になっているのだ!?」
「あっちで死んで……気がついたらこんな姿になってたってだけ。いやぁ、人間だったってバレると今までの所業が少し恥ずかしくなりますなぁ」
「…………」
と、キースさんもなんとなく私の気持ちがわかったのか顔を背けた。
「え、エレキさんが元々人間!? 転生?」
「ライトノベルでよくありますね! 異世界転生って本当にあったんだ!」
「なにそこ喜んでんだ。委員長に大地さん」
「えっ、なぜ僕が委員長だと……。うん? まさか!?」
「そのまさかだよ! 私は大神 雷葉! あん時死んだ女の子だよ!」
「うぇえええええ!?」
二人がものすごく驚いていた。
そりゃ知っている人間がこんな姿に転生してるからな。わかるよ。逆の立場なら私も驚いていた。
「えええええ、信じられないんだけど!? まじに大神さん!?」
「そうだよ……。なんでこっち来てんの? どうやって来たの? テロとかどうなった?」
「……大神さんが狼に。……洒落?」
「いや、私もふと思ってること言葉にすんな」
大神が狼になるって言葉遊びかよって。
「お前の元々の名前はオオガミ ライハというのか」
「そうでーす。いい名前でしょ?」
「珍しい名前だな。ライハというのがファミリーネームか」
「ファミリーネーム……? ああ、名字ってこと? 違う違う! オオガミが名字!」
「な、なるほど。ファミリーネームがあるということは貴族の出身なのか」
「……もしかしてこの世界って貴族しかファミリーネームない感じ?」
「違うのか?」
どうやらこの世界は平民は名字を持たないらしい。
私の前世のことをキースさんに話し、この子たちはその前世の時に通っていた高校という学校の同級生だと伝えた。
知り合いということに驚いていたのが印象的だ。
「知り合いならば、性格もわかるだろう? 王国に害をなすとかそんなことは……」
「ないんじゃないかな。二人ともバカ真面目な人だし……」
「どういう話してるんだろ……」
「バカ真面目って褒められてるのかわからんな」
「ならばよし。二人はとりあえず我が家で面倒は見る。まずは言語の習得、だな。こちらの世界で暮らす以上、こちらの言語を話せるようになってくれと伝えてくれ」
「わかった」
私はキースさんの言葉をそっくりそのまま伝える。
二人は納得するしかないようで、言葉もわからないなら会話もままならないということで今日からひたすら言葉を叩き込まれるらしい。
知らない言語をいきなり学ばされるのって嫌だよな……。私ってそういうの教えられないなー。そもそも国語だってろくすっぽ出来ないのに英語なんて出来るかよ。
「とりあえず……二人の言語の対応表を作るところから、だな。近しい言語があればいいが、聞いた覚えもないから一からか……。こりゃしばらく冒険者稼業は無理だな。あいつらは個人で行ってもらうか……」
「大変だね」
「まったく……。というか、エレキがコイツらの言語が話せるからうちによこされたんだ。なければ王城で引き取ってもらえたのに」
「前世の記憶はしゃーなくない? 知り合いが言語わからないままなんかされるの嫌でしょ」
「それもそうだが」
日本語話せるのは前世の記憶のおかげなので仕方ないです。
でもなんで私は二人に意味が通じるんだろうな。日本語喋る感覚で喋ってるけどキースにも通じてるし。自動で翻訳でもされてるのかな。神様から送る申し訳ない程度のチート? なら人間がよかったよぉ。




