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とあるイケメン童貞の苦難  作者: バネ屋
7部 女の闘いスターット!
77/90

#76 イケメン疲喜こもごも




 学校祭一日目、家庭科室でのバカ騒ぎの後、アリサ先輩達は一足先に帰り、俺は料理部メンバーと一緒に後片付けと明日の準備をしていた。

 因みに俺と超合体していたテンザンはアリサ先輩に託し、アリサ先輩と超合体して帰って行った。



 家庭科室に料理部全員が集り在庫のチェックなどもしていたのだが、そこで判明したのが、一日目の焼き菓子の売れ行きが予定を大幅に上回り、6種類あった品数の内4つが品切れになっていた。

 売れ残っている物も残り在庫は少なく、明日には完売するのがまず間違いなく、先輩たちからは、もう宣伝活動も必要ないだろうと言われた。


 部長からも「マゴイチくんがチラシ配りとか色々と頑張ってくれたお陰だね! 折角だから明日は優木さんとゆっくりしてくれても良いからね」と、俺を労ってくれたのだが、そんな言葉くらいで俺の不信感は解消されるわけもなく、むしろ白々しく「理解ある良い先輩風」を吹かせる丸々としたふくよかな部長の笑顔に怒りすら覚え、思わず右手で部長の額を掴んでアイアンクローを喰らわせた。


「よくも可愛い後輩を売り飛ばしやがったなぁぁぁ!銭ゲバぶちょぉぉ!」


「んおぅ!? ノーゥ!ノゥノゥ!ギブ!ギブギブ!」


「ぐぬぬぬぬぬ!」


 部長がギブアップしても止めない俺に、料理部のみんな総がかりで引き剥がされた。


「部長の悪気無さげな笑顔に殺意が湧いて思わず手が勝手に・・・生まれて初めて女性に暴力ふるっちまったぜ」


「こんなに幼気いたいけな女の子に暴力だなんて、ひどひ・・・びえん」


 学校祭始まってからの部長の銭ゲバ振りの数々を見て来た料理部の面々には部長の嘘泣きが通用しなかったようで、そのみんなの反応に気づいた部長は、「売上数えようか!楽しみだね!」とケロっと立ち直っていた。




 後で笹山さんと長山さんに聞いた話では、俺とアフロが休憩に出て行った後、アリサ先輩たちは口論になり、おちょくった態度のアカネさんにアリサ先輩が激怒して暴れそうになったのをアンナちゃんとアズサさんが何とか抑えて、その様子を見ていた部長が、「揉めるなら勝負で決めたら?ゲームとかの大会にするなら、料理部がスポンサーになるよ?」と提案して、アリサ先輩&4人の元カノで相談して、腕相撲大会になったそうだ。


 因みに、5人が揉めてた内容は、「元カノの分際で今更マゴイチにちょっかい出すな」と言うアリサ先輩に対して、「そんなのはコッチの自由だ。彼女でも無い女に言われる筋合いない」と主張するアカネさん&アクア先輩とで揉めていたらしく、腕相撲大会で勝負と決まり、その流れでアリサ先輩が「最後に私が勝ち残る! そしてマゴイチに告白する!」と宣言して、それならばと部長が『西尾マゴイチ杯』と大会名を名付けたそうだ。



 結果的には、念願の新しい彼女が出来て喜ぶべき日だったとは分かってはいるが、それにしてもだ、料理部での生贄扱いといい、柏木アカネのウザ絡みといい、衆人の中での元カノ達による俺のことでの痴話喧嘩といい、勝手に名前を使われ腕相撲大会での羞恥プレイといい、俺にとって不幸過ぎる出来事が多すぎて、喜びよりも疲弊が勝っているというのが正直なところだ。




 ◇




 夕方になり、家に帰ると、アリサ先輩とアフロの二人が俺の部屋で待っていた。


 アンナちゃんも一度は俺んちに来たらしいが、元々人前に出るのが苦手なアンナちゃんは、大勢の観衆の前でアリサ先輩や俺の為にと激熱青春の主張したことをジワジワ思い出し、今更になって恥ずかしさで狂ったように床でゴロゴロと悶絶して、「やっぱ帰る」と言って帰ったらしい。 既に黒歴史になってしまったようだ。

 アズサさんは、腕の負傷を訴えてアリサ先輩のシゴキから逃げるように帰ったらしい。

 まぁ特にアンナちゃんには感謝しか無いし、二人には今日はゆっくり休んで欲しいと思う。



「おかえり!マゴイチ!」


「ただいまっす」


 帰って来た俺を元気一杯に迎えてくれたアリサ先輩は、俺のベッドに寝転んで「週刊プロレス」を読んで待っていたらしく、アフロの方はアリサ先輩から奪い取った副賞の焼き菓子セットを食べながらゲームをしている。


 まぁ、夏休みの間、毎日のように見て来た光景だな。

 夏休みと違うのは、アリサ先輩が俺の恋人になったということくらいか。


「かーちゃんが二人ともメシ食べて行くか?って」


「ええ、頂くわ」

「モチロン」


「あいあいさ、んじゃかーちゃんに言ってくる」


「あ!その前にこっち来て!」



 ベッドで体を起こしたアリサ先輩に呼ばれたので、ベッドの淵に腰掛けると両手を広げて「ん~♡」と眼をつむって幸せそうな顔で抱き着いてきたので、「あいあい」と言いながら抱きしめ返した。


 付き合ってなかった今まででも時々こうしてハグされることはあったけど、改めて恋人としてするハグはこれまでと違うグッと沸き上がる様な何かがある訳でも無く、多分それは今日あった色々のせいで疲れていたり幾つか引っかかることがあるせいだと思う。


 そんなノリきらない俺の内心を知らないアリサ先輩は、体を離すと「むふぅ♡」ととろけ切った顔をしていた。




 ◇




 食卓にウチの両親と5人揃うと、晩飯を食べながら早速アリサ先輩が両親に今日の出来事を話始めた。


「アンナのお蔭でマゴイチ君も漸く素直になってくれたんですよ~」


「もうマゴイチったら!男のクセにアリサちゃんやアンナちゃんが居ないと告白1つ出来ないなんて!」


「そうだぞマゴイチ!とーちゃんが若い頃はそりゃもう並み居る女の子をだな、ちぎっては投げちぎっては投げ、とな」


「とーちゃんはなんの話をしてるんだ?」


「それよりも、ちゃんと避妊はするのよ?結婚するなら最低でもマゴイチの卒業までは待たないとね」


「任せて下さい!お母さま!マゴイチ君が高校卒業した暁には、元気な初孫を!」


「アリサ先輩ナニ言い出してんの?かーちゃんも、彼女の前で避妊の話された時の息子の気持ち考えてくれ」


「あら良いじゃない。アリサちゃんなら漸くマゴイチもフラフラしなくなって、お母さんもやっと安心出来るわ」


「そうだぞマゴイチ!俺は最初からマゴイチを任せられんのはアリサちゃんしか居ない!って思ってたからな!」


「初対面でめっちゃセクハラ発言しまくってたけどな」


「おばちゃん、炊き込みご飯お代わりしていい?」



 と、ウチの両親もアリサ先輩も相変わらずで、まぁ実際の所、息子の俺から見ててもアリサ先輩はウチの両親には最初から気に入れられてたし、これまでもこんな感じだったので今更ウチの親が態度を変えるわけでも無くいつも通りの食卓で、ほっとしたというのが正直な気持ちだ。



 晩飯を食べた後、アフロは「ムトーの散歩しないとだから、帰るわ」と言ってサッサと帰ってしまった。

 因みに、食事の時にウチのかーちゃんに「アッコちゃん!前歯抜けたの!?っていうか、目ん玉もどうしちゃったの!?」と度肝抜かれて、マジックでらくがきしていたと分かるや「高校生にもなって女の子が顔にらくがきしちゃダメでしょ!」と、お説教されたことをココに報告しておく。



 そして、アリサ先輩も今日は帰ると言うので、「家まで送って行きますけど、その前に少しだけ話がしたいっす」と残って貰った。





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