1話
死刑囚にしろ、その他受刑者にしろ、長期間の拘束は囚人たちの人生に少なからず影響を及ぼす。
特に未成年の頃に拘束されると、真っ当な教育が施されないために影響は甚大である。
だからこそ少年院という施設によって矯正、教育が施されるのだ。
しかし死刑囚となった未成年は別である。彼らはどうせ死刑となるために、懲役がなければ教育も施されない。
だが死刑制度は廃止となった。死刑が科せられた囚人たちは無期刑に変更される。
無期刑とはすなわち、無期懲役のことだ。刑期が一生涯に渡る、死刑に次ぐ重い刑である。
ただし無期刑であっても10年経てば仮釈放の可能性が出てくる。社会復帰の可能性があるのだ。
よって未成年時に死刑囚となってしまった者たちに、直ちに矯正と教育を施す必要がある。
それも学校という環境から隔絶され、死刑囚であるがゆえに教育も施されなかった者たちの為の、特別な指導が必要だ。
俺が赴任された学校は、そのためのものである。
「やっべー。男のイケメンとか久しぶりに見た。あー、ムラムラするぅー」
攻撃的な印象だった生徒の一人が言った。彼女の名は火口 蓮。22歳。短髪でボーイッシュな風貌の彼女は、しかしその顔はどこか女性らしい可愛らしさがあった。
「というか彩ちゃん。先生と知り合いなんだー?」
幼げな印象の二人目が言った。彼女の名は水卜 心香。21歳。背は小さく、顔も幼げである彼女だが、なんと成人しているという。
「ああ。私は彼の家族を皆殺しにしてしまったんだよ」
そして黒ノ彩。24歳。
彼女含む女子生徒三人は、学校の試験運用のサンプルとして選ばれた三人である。
全員が女性であるのは偶然で、条件に近い者が彼女たちだけだったらしい。
そして彼女たちは、俺の判断次第で仮釈放のチャンスが与えられる。最速で10年、しかし現状では30年以上掛かる者がほとんどと言われる、仮釈放のチャンスだ。
「おい、黒ノ」
俺は黒ノに呼びかける。仮釈放とか、今の俺の頭には全くない。
「うん、どうした?」
飄々とした態度で、黒ノは返事をした。
「どうしてお前が生きている? 死刑は、6ヶ月以内に執行されるんじゃなかったのか」
俺は怒りを堪えながら言った。
「ああ、そうか。被害者遺族には、死刑執行の通知がされないんだったな。通知がされないから、死刑が執行されたかどうかの判断がつかない、という訳だ」
と黒ノは一人納得した。




