4話
引き続きニュース番組を聴きながら、俺は勤務地を目指す。やがて刑務所が見えてきた。
その刑務所の正門は、何やら騒がしい様子であった。沢山の人達が騒いでいる様子である。白い横断幕には文字が書かれており、それが高々と掲げられている。
横断幕を持っていない人達は、片手を振り上げて、声を揃えて何かを叫んでいた。
俺はその様子を見ながら、そのまま刑務所に近づく。
「死刑囚を許すなぁーっ!」
「死刑囚を許すなぁーっ!」
「特別教育はやめろーっ!」
「特別教育はやめろーっ!」
刑務所に近づくにつれて、彼らが何を叫んでいるのかが聞き取れてくる。
ああ、やっぱりと、俺は思う。実は特別教育が始まってから、毎日この調子であった。彼らは死刑制度復活を訴え、元死刑囚たちが特別教育によって好待遇を受けているのは許せない、というデモ活動を行っている。
デモ活動と言うと何やら過激に思えるかも知れない。しかし法に抵触しない限り、デモ活動は政治へ参加するための手段の一つだ。飯塚さんによると彼らに違法行為は見当たらないそうなので、彼らを責めるつもりはない。
むしろ特別教育の教師となる前の俺だったら、彼らを応援していたかも知れない。
だが今の俺は、死刑制度廃止の背景を知ってしまっている。今の俺には、彼らの行動が本当に正しいのかが疑問に思えて仕方が無い。
当たり前のことだが、死刑や死刑囚なんて、多くの一般人には無縁な言葉だ。今まで通りの制度であれば、多くの人々は今まで通りの人生を送ることができる。
死刑が犯罪抑止力になるという科学的根拠はない。しかし逆に、死刑が犯罪抑止力にならないという科学的根拠もない。
つまり死刑制度廃止によって、多数派の人達の安全が崩れる可能性がある。他人事であったはずの死刑囚たちが、他人事ではなくなるかも知れない。
だから死刑制度廃止に反対派が多いのは必然だ。しかしその反対派の人たちは、死刑囚たちがどのような思いで日々を送っているのか、刑務官たちの精神的負担がどれほどのものなのか、考えたことはあるのだろうか。
俺は考えたことがなかった。しかし、今は考えざるを得ない。
「死刑囚を殺せぇーっ!」
「死刑囚を殺せぇーっ!」
より一層過激な言葉が叫ばれている。
俺はそんな様子を尻目に、いつも通り裏門から刑務所内に入っていった。




