2話
「ええ! 赤ちゃん! 可愛い!」
やはり水卜がその子ブタを見て言った。
「ほう、ブタの出産シーンか。初めて見るな」
興味深そうに、黒ノは言った。
「ブタは一度の出産で大体4~7匹程度、産みます。まだ一匹しか産んでいないみたいなので、まだまだ産みますよ」
と中島が言った。
「良いかお前ら。産まれた子ブタを一匹選んで飼うから、どの子にするか考えとけよ」
俺がそう言っている間に、また母ブタのお尻がヒクヒクとしてくる。
俺は横目で彼女たちの様子を伺う。三人とも母ブタに釘付けだ。小動物を虐殺したことがある火口も、例外なく興味深々である。
そんな彼女たちの視線が集中する中、母ブタの身体が大きく動く。
ーーヌポッ。
まるでそんな効果音が鳴ったかのように、ヌルッと子ブタが産まれた。
「おおっ!」
そう声を上げたのは火口であった。飼育小屋の外からドア越しに見ていた彼女は、金網で出来ている小屋の壁に手を掛ける。
一方で子ブタは、体液で滑ることに苦戦しながらも、必死に立って母ブタの乳を吸おうとしていた。
「お、おい! へその緒がっ! 大丈夫なのかよ!」
火口が必死に言った。子ブタは母から繋がれた、へその緒が邪魔そうであった。
「大丈夫です。自力で抜けますから」
中島は余裕そうに答えた。
「基本的に人間の助けは必要ありません。ただ子ブタが詰まって出てこられなくなる場合があります。その時は私が子ブタを引っこ抜きますので」
と中島は続けた。彼の説明や様子から、慌てる必要は無さそうだ。
「そ、そうか」
火口も納得した様子で、そう言ったのであった。
それから二匹目、三匹目と次々と母ブタは産んだ。その数は十匹にもなった。
産まれた子ブタは皆、何とか母ブタの乳に辿り着いた。しかし、生徒たちが最初に産まれたところを見た二匹目のブタが、未だに乳へ辿り着けていなかった。立つことがままならず、へその緒も繋がったままだ。
「おい、どうしたんだよ! お前だけだぞ! さっさと立てよ!」
火口はまるで自分のことのように、子ブタを急き立てる。その子ブタは懸命に立って、へその緒に足を掬われながら、なんとか母ブタの乳の所まで向かおうとする。
「ほら、いけ! 頑張れっ!」
必死で応援する火口。子ブタはようやく態勢が安定したようで、両足で踏ん張ってへその緒を引っ張る。
「やったっ!」
火口が嬉しそうに叫んだ。子ブタはついに母ブタの乳を吸うことができた。
「先生!」
俺を呼びながら、火口はこちらに振り向いた。とても元死刑囚とは思えない、キラキラした表情を浮かべていた。
「この子が良い!」
火口はその子ブタを指差して、そう言ったのであった。




