1話
今更ながら俺が務めることになった学校の説明をしようと思う。
生徒たちは元死刑囚である。死刑制度があった頃の ”元死刑囚” という言い方は、死刑執行後の受刑者のことを指していた。しかし今では死刑制度が廃止されたので、死刑が免除された人達のことを指している。
そんな元死刑囚である彼女たちは、学校に通うことになった。学校とは言っても、当然ながら受刑者を外に出すわけには行かない。
刑務所には既に教育を施すための施設がある。しかしそこでは一般の受刑者が教育を受けるための場所である。そんな彼らと元死刑囚を同じ空間にいさせることは危険だ。また教育レベルも違ってくる。
なので刑務所に別の棟を増設し、そこに授業のための教室や職員室等を用意した。それらを総称して学校と呼ぶ。
生徒となった元死刑囚たちは、拘置所から刑務所に移され、増設された棟の独居房から教室に移動する。
刑務所にいる受刑者には通常、教育指導による授業や仕事を行う。しかし彼女たちはそれら一切を免除し、俺の授業を一日中受ける。
増設された棟のすぐ側には庭があって、盲導犬訓練用に用意した犬たちはそこの犬小屋で飼育されている。
そして実は、盲導犬以外の飼育小屋が設置されている。そこには犬ではない動物が飼われている。俺が教育のために用意した動物だ。
「城島さん!」
いつも通り盲導犬訓練の授業を行っている時であった。飯塚さんが教室内に入って、俺に声を掛けた。
「もうすぐ、産まれそうです」
そして彼は、俺にそう告げた。
「おい、お前ら。手を止めて俺についてこい」
それを聞いた俺は、生徒たちにそう言って引率した。向かう先は、先ほど説明した飼育小屋だ。
歩いて数分。件の飼育小屋が見えてきた。その隣には訓練中の犬たちの飼育小屋がある。どちらも肌色の美しい木材で出来ている。犬の飼育小屋は、三匹が同じ小屋に住むので大きめだ。
「きゃあ、可愛い! ブタさんだぁ!」
飼育小屋の中を見た水卜が、可愛らしく言った。彼女の言う通り、飼育小屋にはブタが一頭いた。
「何か、変じゃないか」
黒ノが異変に気がついたようである。彼女の言う通りで、ブタは飼育小屋の中でぐったりと横たわっていた。
「ああ、城島さん。もう既に一匹産まれたみたいです」
そう俺に言ったのは、ブタの飼育の専門家である中島 守さんである。飯塚さんと同じくらいの高齢の男性だ。
ほら、と彼が指差す方に、かなり小さいブタが一匹いた。子ブタは母ブタのすぐ側にいて、つるつると滑りながら懸命に立って歩こうとしていた。




