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死刑囚ハーレム  作者: violet
盲導犬の訓練
18/25

6話

「ひとまずは、お疲れ様です」


 午後16時。諸々の処理を終えた俺は、職員室に居た。そこで飯塚が俺をねぎらってくれたのであった。


「それにしても、肝を冷やしましたなあ。彼女があんなことをするとは、想像も付きませんでしたよ」


 石垣も職員室にいた。俺の側に来て、同じく俺に話しかけた。


「しかし、今回の一件はかなり問題ですよね。死刑囚のための学校は、取り止めでしょうか」


 俺は飯塚に尋ねた。


「いえ。何らかの問題が発生することは、当然織り込み済みです。少なくとも今回は試験運用も兼ねているので、最後まで続けて頂きますよ」


 そして飯塚は、俺の肩に手を掛ける。


「まあ、そう気を落とさないで下さい」


 優しく、飯塚は俺に言ってくれた。


「いえ。もちろんそのこともあります。しかしそれ以上に私のあの時の言動は、教師にあるまじきものだったかも知れない、と」


 そう言って、俺は自分の言ったことを思い出す。


――これでこの子が死んでみろ。お前を絶対に許さないぞ。


 そんなことを言うまでもなく、水卜は既に後悔しているように見えた。それでもこんなことを言ったのは、俺自身の怒りをぶつけたかったからに他ならない。


「城島さん。あなたは生き物の死に敏感なんです。もちろんそれは悪いことじゃありません。水卜の行動に怒りを覚えるのは、当然のことですよ」


 飯塚さんにそう言ってくれたおかげで、俺は少し気持ちが楽になる。


「飯塚さん。俺はやっぱり、思ってしまうんです。彼女たちがきちんと死刑にされていれば、今回の被害はなかったのではないかって」


 そして俺は、飯塚さんに言った。


「どうして、彼女たちはルールに則って死刑にされなかったんでしょう」


 しばらくの間、沈黙が続いた。


 やがて、石垣さんが俺の肩に手を掛ける。


「死刑囚には、というより判決が確定した確定囚には、その判決に納得できない時に再審を請求できる権利があるんです」


 そんな語り口で、死刑執行が延びる仕組みを説明し出した。


 死刑囚には再審を請求できる権利がある。その請求中に死刑を執行するということは、死刑囚の権利を侵害するのと同じである。


 また判決後6ヶ月以内というのは、再審請求期間中は算入しないという規定がある。これにより再審によって6ヶ月を過ぎたとしても、法律上は問題はない。


 再審によって無罪を勝ち取った例もあるので、再審請求中は死刑を執行し難いのである。


「でもそんなの、ただ延命のために再審しているだけじゃないですか」


 俺は石垣に言った。


「ええ、そうかも知れません。でもそうじゃないかも知れない。何せ自分の命が掛かっているんです。その権利を蔑ろにする訳にはいきません」


 それでも近年では再審請求中に死刑を執行した例がいくつかある、と石垣は続けた。


「それとね、城島さん。死刑がどうやって執行されるのかご存じですか」


 石垣はそして、死刑執行までのことを語り始める。

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