4話
俺は再び教壇に立つ。
そう信じるとことができるということを、信じることにしたのだ。
「今日からお前らの担任となる、城島正だ」
黒板に書いた後、俺は生徒たちを見る。
火口蓮、水卜心香、そして黒ノ彩。彼女たちの髪型はある程度自由であった。意外にも刑務所には美容室があったりなど、髪型の自由にある程度の配慮がされている。
まあ彼女たちは元死刑囚で懲役がなかった。よって彼女たちは刑務所でなく拘置所という場所にいたのだが。
そして彼女たちは制服を着ていた。女子高生というよりも大人びた、大学に制服にあったらこんな制服だろうといった感じの、制服である。
囚人服でないのは、この学校が設立されたことによる特別処置だ。
「性欲は発散できたようで、なによりだよ。なあ……」
黒ノがニヤリと笑って言う。
「城島、先生」
まるで俺が先程まで自慰に耽っていたかのような言い草である。要するに、馬鹿にしているのだろう。
「やだぁー先生、へんたぁーい! 私たちをオカズにするなんて、えっちぃー!」
水卜が面白がって、黒ノに便乗した。彼女は厭らしく口角を釣り上げ、、右手で口元を押さえつつ、クスクスと笑った。
彼女たちの挑発に乗ってはだめだ。心をかき乱されるだけだということに、先程思い知ったばかりだ。
「じゃあとりあえず、お前らの自己紹介からだ。火口」
俺は火口に指示した。
「もう済ませてるぜ」
ふてぶてしく、火口は言った。そういえば、水卜は黒ノのことを ”彩ちゃん” と呼んでいた。
「俺がお前達を知らないんだ。いいから、やれ」
すると火口は、やれやれといった感じで起立した。一応、言うことには従うらしい。
「俺は火口蓮。22歳」
とだけ言って、火口は座ってしまう。
こいつは自身のことを、俺、と呼称するのか。まあ、キャラに合っているけれど。しかし今は、そんなことよりも。
「おい火口、誰が座って良いと言った?」
「あん? これ以上、何を話せって言うんだよ」
と火口は言うので、俺は趣味とか、好きなこととかを提案しようとしたが、やめておいた。拘置所で死刑を待つだけだった奴に、そんなものがあるとは思えなかった。
「じゃあ、お前の罪を話せ」
俺が言うと、火口はギロリと俺のことを睨んだ。
「そんなこと、調べりゃ分かんだろ」
もちろん、その通りだ。だがもう教育は始まっている。罪を自ら口にすることによって、その罪を自覚させるのだ。
「良いから言え。聞かされてないのか? お前らの仮釈放のチャンスは俺が握っているんだ。口答えしない方が、身のためだ」
俺は冷酷にそう突きつけると、彼女は舌打ちをした後に再び立ち上がり、そして語り始めた。